トランプ次期政権下で環境・エネルギー政策も変更の可能性、ジェトロの環境エネルギー月例レポート(2024年11月)
(米国)
ニューヨーク発
2024年12月12日
ジェトロは、米国の環境エネルギー政策動向をまとめた2024年11月分の月例レポート(476KB)を公表した。同レポートは、日本企業が米国の環境・エネルギー政策に関する動向を把握できるよう、毎月作成して特集ページに連載している。
今回のレポートでは、ドナルド・トランプ次期大統領の当選に伴い、同政権下で想定される環境・エネルギー政策の変更に焦点を当てて記載している。環境政策に関しては、トランプ氏が選挙キャンペーン中に言及してきたとおり、「パリ協定」から撤退するとみられるほか 、バイデン政権が進めてきた米環境保護庁(EPA)による一連の規則の撤回が進むとみられている。撤廃の対象として挙げられたEPAの規則には、2024年4月に最終化された火力発電炭素排出規則、同年3月に最終化された乗用車やトラックを対象とした排ガス規制などがある。
エネルギー政策に関しては、石油・天然ガス・石炭といった化石燃料の採掘、生産、輸出を後押しする一方、太陽光・風力・原子力などの再エネ/クリーンエネルギーは、分野によって今後の方針が異なる見込み。原子力は、両党の合意が得やすい超党派のエネルギー分野として捉えられおり、大幅な政策転換はないものとみられる一方、インフレ削減法(IRA)に基づく電気自動車(EV)や太陽光・風力に関する税額控除は一部ないし全部の撤廃の可能性がある。また、炭素回収・貯留・利活用(CCS/CCUS)に関する税額控除に関しては、同技術の開発にオイルメジャーが参入しているため共和党議員の支持も得ており、トランプ次期政権下でも引き続き支援される見込み。
また、トランプ次期政権下での米国の動向を追う際には、連邦政府の動きとあわせ、州政府の気候変動・脱炭素化政策の行方にも注目すべきだ。11月5日の大統領・連邦議会の選挙と同時に、州議会選挙、一部の州政府では知事選挙が実施されたほか、いくつかの州では環境・エネルギー分野での住民投票も行われている。カリフォルニア州やワシントン州などでは、住民投票を通じて気候変動対策を引き続き推進していく方針が明確になる一方、いくつかの州ではこれまで取り組まれてきた気候変動対策に影響を与え得る結果となっており、今後の動向が注目される。また、トランプ氏は、EPAがカリフォルニア州などをはじめとする一部の州政府に対して付与してきた独自の厳格な排ガス規則を策定、運用する権限を撤回する意向も示しており、実際に州政府の脱炭素規制に対してどこまで介入するのかも注目される。
このレポートではそのほか、米国内外の主要企業の最新動向も併せて記述する。なお、「特集 世界の脱炭素・カーボンニュートラル動向」で政策動向や、産業・企業動向を紹介している。
(加藤翔一)
(米国)
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