日本バングラデシュIT協会に聞く、バングラデシュでのIT産業の可能性
(バングラデシュ、日本)
ダッカ発
2024年12月26日
バングラデシュでは、主要産業である縫製産業に続き、次世代の新産業としてIT産業の発展が期待されている。大学などのコンピュータサイエンス学部では英語で授業が行われ、毎年2万人程度の卒業生を輩出するといわれている。また、国内には60万人を超えるITフリーランサーが活動しているとされ、世界のオフショア市場を支える存在となっている。同国のIT産業の可能性と日本とのビジネス機会について、日本バングラデシュIT協会(JBITA、東京都)のアンジャン・ダス代表理事(Kaicom代表取締役)と仲宗根俊平副代表理事(SUN代表取締役社長)に聞いた(12月23日)。
(問)日本バングラデシュIT協会の活動内容は。
(答)日本とバングラデシュのIT産業をつなぐ架け橋として、活動している。主な取り組みとして、バングラデシュに関心のある企業間の交流イベントの開催、優秀なバングラデシュIT人材を日本の企業へ紹介するイベントの実施、さらにAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの最新技術情報の共有を通じて、企業間の協業促進を支援している。
(問)日本企業にとってのバングラデシュにおけるIT産業のビジネス可能性は。
(答)バングラデシュのIT産業は急速に成長しており、日本企業にとって新たなビジネスチャンスが広がっている。まず、毎年約2万人のIT系卒業生が輩出される豊富な人材リソースは、労働力不足が深刻な日本にとって大きな魅力だ。また、バングラデシュのエンジニアの人件費は他のアジア諸国と比較して非常に競争力があり(2024年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)参照(2.4MB))、高品質なITアウトソーシング(外部委託)を低コストで実現可能だ。さらに、バングラデシュ政府がIT産業を重点分野に位置づけ、税制優遇措置やインフラ整備を進めているため、日系企業が安心してビジネスを展開できる環境が整っている。
(問)バングラデシュにおけるIT産業の課題と今後の活動方針は。
(答)バングラデシュのIT産業には、以下のような課題がある。民間企業や政府機関でICT(情報通信技術)サービスやソリューションの導入が遅れており、その結果、バングラデシュ国内のIT企業が国内で仕事を得る機会が限られ、オフショア市場に依存せざるを得ない現状がある。さらに、ICTサービスやソリューションを導入した企業もその後の維持管理への投資意識が低く、導入されたサービスが長続きしないという問題も顕著だ。こうした課題を解決するためには、日本のIT企業とバングラデシュのローカルIT企業がJBITAを通じてパートナーシップを構築し、日本の先進的なソリューションをバングラデシュへ導入することが重要だと考える。これにより、バングラデシュと日本のIT産業のさらなる相互発展が期待される。
JBITAのアンジャン代表理事(左)と仲宗根副代表理事(JBITA提供)
(安藤裕二)
(バングラデシュ、日本)
ビジネス短信 d2ab87af4c1c142b