上海市、低空域飛行活動の管理体制強化の実施方案を発表

(中国)

上海発

2024年12月06日

上海市交通委員会は11月21日、「上海市低空飛行サービスの管理能力構築のための実施方案」を発表した。上海市の低空域での飛行活動の管理体制を強化し、安全性と秩序の確保、質の高い産業の発展を支援していくとした。主な取り組みとして、低空域の分類・調査の実施により、同市の低空デジタル空域地図の作成や、航空交通管理機関、民間航空会社、地方政府などのシステムの相互接続を強化したプラットフォームの設立、インフラや関連法令の整備などを挙げている。

実施方案では、3段階に分けて実行計画を示した。主な内容は次のとおり。

  1. 2024年末まで:準備期間と位置付け、関連機関とのコンソーシアム設立を推進し、企業、研究機関、業界の協力を強化する。
  2. 2025年末まで:市と区が連携しながら、長江デルタ地域が一体となった低空飛行組織の管理体系を構築する。低空域の基礎的な分類と境界設定を完了させ、低空域デジタル地図を作成し、少なくとも累計150本の飛行ルートを整備する。また、低空飛行のための離着陸地点、通信、ナビゲーションシステム、監視システムなどのインフラを整備し、初歩的な監督管理体制を整えていく。
  3. 2027年末まで:累計400本の飛行ルートを整備し、ニーズに応じて幾つかの区レベルの飛行サービスステーションを建設し、監督管理体制も最適化していく。また、市の低空飛行サービス管理に関する立法作業を推進する。

実施方案ではまた、重点モデル地区を設定し、推進していく方針も盛り込んだ。金山区では「『海上-港湾-都市』スマート物流」の構築、楊浦区では都心エリアの複雑な環境下での低空物流配送モデルシーンの構築を強化するとした。青浦区では有人飛行試験や、区域をまたぐ低空物流輸送などを推進するほか、臨港新エリアでは低空飛行関連施設の建設を促進していくなどとしている。

このほか、実施方案が推進する低空経済の応用シーンとして、「低空+物流・輸送」「低空+有人交通」「低空+緊急救援」「低空+文化観光」「低空+スマート都市」などを挙げた。

上海市政府は8月16日に「上海市の低空経済産業を高い質の発展に向けた行動方案(2024~2027年)」を発表している。行動方案では、2027年までに新型の低空飛行用航空機の研究開発設計、製造、検査、商業応用の産業体系を構築し、国際的に影響力を有する「天空の城」を建設することなどを目標に掲げた。上海市の民間航空分野の産業基盤を強みとして、低空経済産業の発展を推進する方針だ。行動方案によると、上海市には中国全国の電動垂直離着陸機(eVTOL)のイノベーション企業の約半数が集積しており、無人航空のテスト飛行も先行的に実施され、金山華東無人機基地は全国初の「民間無人飛行航空試験区」に指定されている。また、応用シーンも徐々に深化しており、「金山(海上)-舟山(港湾)-龍華空港(都市)」の物流輸送や、楊浦区などのドローンの出前配達サービスが展開されているほか、長江デルタ地域の横断航路も試験的に運用されている。

今回発表した実施方案は、行動方案をより具体化する内容となっており、今後も低空経済産業の実現に向けた取り組みを強化していくものとみられる。

(尹世花)

(中国)

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