10月の米個人消費支出、利息・配当増で所得は改善も、消費は慎重、インフレ低下は足踏み

(米国)

ニューヨーク発

2024年11月28日

米国商務省は11月27日、10月の個人消費支出(PCE)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。利息・配当の増加に伴い所得が増加し、貯蓄率は年初来初めて上昇した。一方、消費は実質ベースでほぼ横ばいとなり、支出に対する慎重姿勢を裏付ける結果となった。物価は、PCEデフレーター、食品とエネルギーを除くコア指数ともに伸びが加速した。

所得関連は、個人所得が名目ベースで前月比0.6%増(前月:0.3%増)と市場予測(0.3%増)を上回った。伸びの加速は、利息・配当(前月比1.0%増、寄与度0.2ポイント)の増加が主要因。雇用者報酬(0.5%増、0.3ポイント)も引き続き堅調に推移した(添付資料表1参照)。これに伴い、単月ながら貯蓄余力が増加し、貯蓄率は4.4%(前月:4.1%)と年初来初めて上昇した。

名目個人消費支出は、前月比0.4%増と前月から伸びが鈍化した(添付資料表2参照)。財部門(寄与度0.0ポイント)の伸びが低下したためで、前月の特殊要因(2024年11月1日記事参照)が剥落したことが大きな要因。サービス部門(0.4ポイント)の寄与は前月とほぼ変わらない水準で、ヘルスケア(0.09ポイント)、住居費(0.07ポイント)、金融・保険(0.06ポイント)などが寄与した。

実質ベースでの個人消費支出は、前月比0.1%増と低調に推移した。内訳では、財部門(寄与度0.01ポイント)のパソコンやタブレットなどの余暇向け製品(0.04ポイント)、女性用衣類(0.03ポイント)などが寄与の中心で、小売り各社による年末商戦の前倒し・大型セールが影響した可能性がある。そのほかは総じて低調で、消費者の慎重な購買姿勢がうかがえる。サービス部門(0.08ポイント)では、ヘルスケア(0.07ポイント)が伸びの大半を占めた。

物価関連は、PCEデフレーターは前年同月比2.3%増(前月:2.1%増)、前月比では0.2%増(0.2%増)だった。コア指数は前年同月比2.8%増(2.7%増)、前月比0.3%増(0.3%増)となり、連邦準備制度理事会(FRB)が参照している3カ月前比、6カ月比はいずれも年率がそれぞれ2.8%増(前月:2.4%増)、2.3%増(2.3%増)で、いずれも市場予測と一致した。

前年同月比の内訳では、ガソリン(12.4%減)や食品・エネルギーを除く財(0.3%減)など財部門が引き続き押し下げに寄与する一方、住居費(4.9%増)、金融サービス(6.3%増)などに牽引され、サービス部門(3.9%増)は伸びが加速した(添付資料表3参照)。

コア指数の低下は、数カ月にわたり足踏み状態にある。11月26日に発表された11月6~7日開催のFOMC議事録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、予想よりも時間がかかる可能性はあるものの、財部門における企業の価格決定力の低下や、インフレ期待の安定などを根拠に、今後も2%に向け低下していくとの見方が示されている。10月の指標も基本的にはこれを踏襲するものといえそうで、市場では、12月17~18日の次回FOMCでも0.25ポイントの利下げを予想する者が7割程度を占めている。

(加藤翔一)

(米国)

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