第17回温室効果ガス制御技術国際会議がアルバータ州カルガリーで開催
(カナダ)
トロント発
2024年11月01日
第17回温室効果ガス制御技術国際会議(GHGT-Greenhouse Gas Control Technology)が10月20~24日、カナダのアルバータ州カルガリーで開催された。
この会議は二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)技術、CO2回収・利用・貯留(CCUS)技術を対象とする国際会議としては世界最大で、隔年で開催されている。主催者の国際エネルギー機関(IEA)温室効果ガスR&Dプログラム(GHG)の発表によると、世界40カ国以上から研究者、産業界および政府関係者、ビジネス関係者を含む約1,500人が参加。4日間にわたり、CCSに関する基調講演、350以上のプレゼンテーションやポスターセッションを通じて技術的・学術的な発表が行われた。
また、今回の会議から新たにビジネス関係者向けのプログラムが設けられ、CCS技術の導入、リスク管理、資金調達、世界的な規制といったビジネス関係のトピックスを取り上げたセッションが行われた。また、25日にはアルバータ州内にあるCCS施設および関連施設を訪問するツアーが行われた。
会議初日の冒頭に基調講演を行ったオックスフォード大学のM.アレン教授は、「CO2排出量の削減目標を達成するためには、植樹や化石燃料の利用削減をするとともに、CCS技術を活用し、排出量全体の約30%を回収・貯留する必要がある。しかし、現状CCSで回収・貯留されるCO2は排出量全体の0.1%にとどまり、CCS技術にはCO2削減対策に係る施策全体のわずか1%しか資金が投入されていない」と指摘した。CCSへの投資をより活発化するには、「現状のプレーヤーへの経済的動機付け、全体的な制度化が必要」と述べた。
ビジネスセッションでは、カナダ・アルバータ州のCCSの現状や特徴について紹介があった。カナダではアルバータ州、サスカチュワン州でCCSが進められているが、特にアルバータ州には2007年からCCSへの投資が行われており、CCSに関する技術、適した地層、エネルギー関連企業を中心とした市場参加者、投資に対するインセンティブ、規制の整備、石油開発にひもづくCCSプロジェクトの操業実績といった各種条件が整っており、カナダのCCSを牽引する州だというコメントがあった。アルバータ州のCCS・CCUS事業としては、(1)アルバータ・カーボン・トランクライン(ACTL)や、(2)クエスト(シェル・カナダ主導)などが特によく知られている(2024年2月19日付地域・分析レポート参照)。
会場の様子(ジェトロ撮影)
会場内では、26の企業・団体によるブース展示が行われた。日本からはCO2の回収技術を有する三菱重工業(MHI)が出展。また、CO2直接空気回収(DAC)技術を有するスバンテといったカナダのスタートアップ企業の展示も行われた。
次回のGHGTは2026年にオーストラリア西部のパースで開催される予定。
(山田あゆみ)
(カナダ)
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