バイデン米政権、電力網強化に15億ドル投資、地域間送電導入による2050年までの節減効果も発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年10月07日

米国エネルギー省(DOE)は10月3日、4つの送電プロジェクトに総額15億ドルを投資すると発表した。インフラ投資雇用法(IIJA)に基づき、地域をまたぐ長距離の高圧送電施設および配電システムを拡充するべくDOEが推進している「送電円滑化プログラム(Transmission Facilitation Program、略称TFP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によるもの。

DOEは送電網の整備を進めるため、2022年1月「より良い送電網構築イニシアチブ(Building a Better Grid Initiative、略称BBGイニシアチブ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、さまざまな支援を実施している。このイニシアチブには、TFPプログラムや地域における電力網の強化を図るためのグリッド・レジリエンス・イノベーション・パートナーシップ(GRIP)プログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2024年8月8日記事参照)など電力網のハード整備に対する助成・融資プログラム(注)のほか、優先度の高い送電ニーズを特定する全国送電ニーズ調査や、2050年までの地域間送電の在り方を検討する全国送電計画調査(NTP調査)などが含まれている。

TFPでは、送電事業者や開発事業者を対象とした、支援なしでは整備が困難な新規の大規模送電プロジェクトに焦点を当てており、25億ドルの基金によりその資金調達を支援する。具体的には、DOEが新しい送電線の系統容量の最大50%を40年にわたって購入してプロジェクトの採算性を確保するほか、必要に応じ融資も実施する。これらにより、プロジェクトの信用力を高め、民間投資を呼び込むことを狙う。

今回発表された15億ドルの投資は、4つのプロジェクトに対するもの。これらのプロジェクトは、ルイジアナ、メーン、ミシシッピ、ニューメキシコ、オクラホマ、テキサスの6州で合計約1,000マイル(1,609キロメートル)の新規送電線を整備する計画で、送電容量は7,100メガワット(MW)となる。この容量の最大50%を上限として購入することで支援する予定。約9,000人の雇用を創出することが期待されている。

既に2023年10月に第1ラウンドとして3つのプロジェクトが採択外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされており、今回の4プロジェクトで、TFPの25億ドルの予算のほぼ全てが充当されたことになる。

併せて、DOEは上記BBGイニシアチブに位置づけられた全国送電計画調査(NTP調査)の最終版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。これよると、電力需要の増加に伴い、2050年には2020年比2.5~3.3倍の送電容量を確保する必要があり、これを前提に地域間送電システムの導入によりどの程度コストが削減されるかが試算されている。それによると、送電システムの大規模かつ広域での拡張により、燃料、発・蓄電などの電気システムコスト削減利益として、投資1ドル当たり約1.60~1.80ドルの節約が見込まれる。結果として、2050年までに発電等も含めた電力システム全体のコストを2,700億~4,900億ドル削減可能としている。また、地域間協調による資産適正化で、送電システムのコストが1,700億~3,800億ドル削減可能と予測されている。

(注)送電網のハード整備に活用可能な資金提供プログラムについては、DOEホームページで一覧が発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされている。送電網の規模や資金提供方法などに応じて9つのプログラムが用意されている。

(藤田ゆり、加藤翔一)

(米国)

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