2024年上半期の貧困率が上昇、雇用悪化響く

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2024年10月31日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は9月26日、世帯アンケート調査(EPH)の結果PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。2024年上半期の貧困率は52.9%で、2023年下半期に比べて11.2ポイント増、前年同期比で12.8ポイント増となった。極貧率は18.1%で、前期比6.2ポイント増、前年同期比8.8ポイント増だった(添付資料図参照)。ハビエル・ミレイ政権発足後、貧困率、極貧率ともに大幅増となった。INDECが半期ごとに実施しているEPHは、国内31都市(人口約2,960万人)を対象にしており、今回の調査では、貧困人口が約1,570万人、うち極貧人口は540万人だった。

INDECによると、1世帯当たりの基礎的全体バスケット(CBT、基礎的食料・住宅・保健・教育・衣類その他の日常的かつ基礎的支出)は、平均70万9,318ペソ(約11万3,490円、1ペソ=約0.16円)で、この金額に満たない収入の世帯・人口を貧困層と見なす。今回の調査では、貧困世帯の平均収入は40万7,171ペソだった。1世帯当たりの基礎的食料バスケット(CBA、食料のみの基礎的支出)は平均34万9,073ペソで、この金額に満たない収入の世帯・人口を極貧層としている。極貧層世帯の平均収入は23万2,453ペソにとどまった。

年齢層別にみると、0~14歳の貧困率は66.1%で、前期比で7.7ポイント増加した。うち、同年齢層の極貧率は27.0%で、8.1ポイント増加した(添付資料表参照)。15~29歳、30~64歳、65歳以上の年齢層でも貧困率は上昇しており、前期比でそれぞれ13.7ポイント、11.8ポイント、12.1ポイントと大幅に増加した。

9月26日付の現地紙「ラ・ナシオン」(電子版)やその他報道は、貧困率の増加は、2023年12月に発足した新政権による大幅な通貨切り下げや、財政緊縮策の導入などのマクロ経済安定化策で雇用環境が悪化し、一般世帯の収入と購買力が大幅に低下したためだとしている。

他方、アルゼンチン国民の半数以上が貧困に陥っているという統計に疑問を抱く声も上がっている。10月2日付の現地デジタルメディア「セニタル」は、INDECの統計に使用されている基準、すなわちCBTやCBAの金額が、欧州諸国などに匹敵するほどの高い数字に設定されている事実があるとしている。例えば、世界銀行によると、世界の人口の44%が1日6.85ドル未満で暮らし、同額が貧困ラインに設定されている。2023年中、アルゼンチンでこの貧困ラインに満たなかった人口は12%だったとしている。いずれにせよ、アルゼンチン・カトリック大学社会負債調査研究所(ODSA)の専門家によると、収入の大幅な減少による貧困率の悪化は事実であり、公共料金や公共交通機関の料金の値上げ(2024年10月30日記事参照)によって、多くの貧困世帯で基礎的な食料の購入を削減せざるを得ない状況にあるとしている。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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