デジタル技術省、日本人顧問を迎え連携促進へ
(ウズベキスタン、日本)
タシケント発
2024年10月18日
IT産業振興に取り組むウズベキスタン。同国のデジタル技術省は2024年9月、日本人を大臣顧問として迎え入れた。同省の狙いや日本への期待について、大臣顧問の桜井明博氏に聞いた(2024年10月11日)。概要は次のとおり。
(問)経歴について。
(答)1986年に日本のICT(情報通信技術)企業入社。欧州5カ国に駐在し、通信・放送・郵便インフラの輸出を担当。近年は海外企業への投資やPMI(企業買収後の統合)を手掛けた。定年退職後、新興国に貢献したい考えから、ウズベキスタンのデジタル技術省に採用が決まり9月16日に当地に着任した。
(問)同省が日本人顧問を迎えた理由は。
(答)日本との関係強化が目的だ。政府に日本留学経験者が多く日本への期待は大きい一方、IT分野で日本企業の進出やビジネスは限定的。日本企業とのITビジネス促進が自分の使命だ。省内でこうした顧問を置くのは日本向けのみであり、日本への特別な期待がうかがえる。
(問)日本企業に期待することは。
(答)ウズベキスタンを人材輩出・IT開発の拠点として捉えたビジネスだ。日本がIT人材不足に悩む中、同国の人材や開発のリソース活用を提案したい。実際にコスト競争力を武器に、欧米向けIT輸出額を大きく伸ばしている。
政府がITを促進する背景には、2020年の大統領令「デジタル・ウズベキスタン2030」がある。IT輸出額を2030年までに50億ドルに伸ばす(2023年は3億4,400万ドル)などの目標を掲げる。IT振興を国家戦略として位置付ける上で、日本を含めた外国企業との連携で目標を達成したい。
(問)ウズベキスタン進出のメリットは。
(答)政府がIT振興に深くコミットしている点だ。条件を満たせば、法人税や社会保険料の免除やオフィス貸与などの支援を提供する。さらに、政府が大学などでのIT教育を振興する、地方にIT支援拠点を設置するなど環境を整えている。IT企業支援機関の「ITパーク」(注)には日本語話者がおり、日本企業も支援を受けやすい。
(問)日本企業にメッセージを。
(答)日本への期待が大きい今、進出や連携のチャンスだ。ITパークの支援する外国企業数は2020年の14社から2024年前半に529社に急増(注)。ウズベキスタンの成長を取り込もうと他国の動きは早い。平均年齢29歳の若い経済成長国での事業は日本企業の成長に資する。省としても支援する。
(注)ジェトロがITパークに確認したところ、10月15日現在、ITパークの入居者となっている外資系企業数は582社で、内訳はCIS68%、欧州13%、米国7%、アジア・その他12%。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の影響により、ロシア、ベラルーシのIT企業が中央アジアに移転しており、2022年から2024年初めまでにそれぞれ239社、31社がITパークに登録された(2024年3月22日記事参照)。
(一瀬友太)
(ウズベキスタン、日本)
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