ドイツ政府、産業の脱炭素化に関する気候保護契約で初の案件採択
(ドイツ)
ベルリン発
2024年10月30日
ドイツ経済・気候保護省は10月15日、産業の脱炭素化に関する新たな支援枠組みの「気候保護契約(Climate Protection Contracts)」の初入札で、化学、製紙、ガラス産業の大企業のほか、中規模企業も含む15企業と契約を締結したと発表した。補助額は15年間にわたって最大28億ユーロに上る見込み(プレスリリース)。この支援措置は、炭素差額決済(Carbon Contracts for Difference、CCfD)の仕組みを活用し、工場の脱炭素化の取り組みに係るCAPEX(資本的支出)とOPEX(事業運営費)の追加費用を補助するもので、3月12日に初入札を開始した(2024年3月18日記事参照)。
補助額は、実際のエネルギーの市場価格などを踏まえて毎年調整する基準価格と実効炭素価格の差額と実際に削減された二酸化炭素(CO2)排出量を掛け合わせて決定される。同省によると、水素やグリーン電力などのエネルギー市場価格が下がった場合、企業が受け取る支援金もそれに応じて減るため、実際の拠出額は28億ユーロを大きく下回る金額になる見込みだという。今回の契約により、15年間にわたって最大で1,700万トンのCO2削減が見込まれる。
契約を締結した15社のうち5社は、水素を使用して生産工程の脱炭素化を計画している。2024年末までに開始する予定の第2回の入札では、今回対象外だったCO2回収・利用・貯留(CCUS)技術も助成対象となる。
同省は、この支援策のほか、規模が比較的小さいプロジェクトに向けた脱炭素化支援も行っている(プレスリリース)。「産業と気候保護の連邦支援(Bundesförderung Industrie und Klimaschutz)」と名付けた支援策では、2030年までに約33億ユーロの助成が予算化されている。この支援は予算50万ユーロ以上の比較的小規模なプロジェクトから応募が可能で、1プロジェクト当たり最大10億ユーロを補助する「気候保護契約」を補完するかたちでスタートした。そのため、「気候保護契約」と「産業と気候保護の連邦支援」の両方の助成金を受け取ることはできない仕組みとなっている。
(打越花子)
(ドイツ)
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