G20環境・気候持続可能性大臣会合、リオ宣言の地で気候変動対策を主導
(ブラジル)
サンパウロ発
2024年10月09日
ブラジルのリオデジャネイロ市で10月3日に開催されたG20環境・気候持続可能性大臣会合で、気候変動、生物多様性の損失、砂漠化、海洋・土壌の劣化、干ばつ、汚染といった危機への対応を強化することで合意した。同会合は、1992年のリオ地球サミットで採択された「環境と開発に関するリオ宣言」から32年を経て、再び同市で開催された。
同会合で議長を務めたマリーナ・シルバ環境・気候変動相は冒頭演説で、「G20加盟国は、世界のGDPと人口の8割を占め、世界の温室効果ガス(GHG)総排出量の約8割、廃棄物排出量の75%を占めている。だからこそ、大きな責任がある一方で、気候危機対策を率いることができる」と述べた。
10月3日付現地紙「バロール」によると、シルバ環境・気候変動相は会合後の記者会見で、全会一致で共同声明が採択されたと説明した。同声明の主な内容は次のとおり。
- 海洋:持続可能な海洋資源の利用や海洋生物多様性保全に向けた対策を、各国の「国が決定する貢献(NDC)」と「生物多様性国家戦略および行動計画(NBSAP)」に含めることを奨励する(注1)。
- 生態系保護活動への資金供給:環境保全活動への資金調達の重要性が強調され、ブラジルが国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で発表した、国際熱帯雨林保護基金「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(TFFF)」が、森林を保全する国々に予測可能で大量の資金を提供するための具体的な提案として評価する(2023年12月14日記事参照、注2)。
- 気候変動対策における適応行動と資金の強化:開発途上国の気候変動適応力強化のため、G20は連携し、次の取り組みを推進する。(1)気候科学の知識・技術基盤の強化、(2)適応を開発の優先事項として位置付け、(3)公的資金を中心とした資金調達、(4)民間投資促進のための枠組み構築。これらの活動を通じて、社会経済開発と連携した効果的な適応策の実施を目指す。
- 廃棄物と循環型経済:化学物質・廃棄物の適正管理と汚染防止に関する科学・政策パネルの設立し、2024年末までに海洋環境を含むプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を作成することを奨励する。
共同声明は、11月18~19日にリオデジャネイロ市で開催されるG20サミットに参加する各国首脳に提出される予定。
(注1)NDCとは、パリ協定の締約国が国連に提出するGHG排出削減目標。NBSAP とは、生物の多様性に関する条約(1992年)の締約国が作成する計画書。
(注2)同提案では、先進国のソブリン・ウェルス・ファンドなどから資金を集めることが想定されている。
(エルナニ・オダ、中山貴弘)
(ブラジル)
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