英政府、エネルギー空間計画の方向性発表、地方政府・業界団体との連携も加速
(英国)
ロンドン発
2024年10月23日
英国政府は10月22日、スコットランドとウェールズ自治政府とともに、2050年に向けたエネルギー空間戦略(Strategic spatial plan)の策定をエネルギー・システム・オペレーター(NESO、注)に指示したことを発表した。
英国初のエネルギー分野の空間計画で、新たなエネルギーインフラの立地や開発時期などを示すもの。策定に当たって交通や水道、環境など他のセクターも考慮し、再生可能エネルギー(再エネ)の系統連携待ち時間短縮やシステム全体のコスト削減が期待できるほか、投資家にとって必要不可欠な長期的な確実性と安定性がもたらされるとした。同計画の初版は2026年に公表する予定で、洋上風力や揚水発電、水素を含む発電やエネルギー貯蔵に焦点を当てる。
クリーンエネルギー移行に向け、地方政府・業界団体との連携加速
英国政府は10月17日、グレート・ブリティッシュ・エナジー(GBE)とスコットランドの公共機関のパートナーシップ締結について、スコットランド自治政府との合意を発表した(2024年8月7日記事参照)。
クリーンエネルギー技術の導入を加速し、それによって生じる経済的利益を最大限に高めるため、国内の優先サプライチェーンとインフラへの投資を確保することが目的だ。対象となる公共機関は、クラウンエステート・スコットランド、スコットランド開発公社、スコットランド国立投資銀行で、潜在的な連携分野は次のとおり。
- 港湾インフラ、製造、建設分野を含むクリーンエネルギーサプライチェーン
- 上記分野を支援する土地取得
- デジタル分野などサプライチェーン開発を支援するサービス
- 地域・コミュニティーのエネルギープロジェクト
また、英国政府とスコットランド自治政府は10月16日、石油・ガス産業を含む洋上エネルギー業界団体OEUKと再エネ業界団体リニューアブルUKに対して、「エネルギー・スキル・パスポート」提供の支援を行うとの書簡を連名で送付した。「エネルギー・スキル・パスポート」とは、OEUKとリニューアブルUKによるイニシアチブ。石油・ガス産業の労働者が洋上風力を含む再エネ分野への転職をより容易に行えるよう、基準を統一し、転用可能なスキルや資格を認定、適切な役割のためのキャリアパスを提示する。2025年1月までに労働者向けデジタルツールの試験運用を開始する予定だ。OEUKの調査では、石油・ガス産業で働く労働者の90%が洋上再生エネ分野に転用可能なスキルを持っていることが示されている。
(注)英国の電力システム監督機関
(奈良陽一)
(英国)
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