MITI、貿易救済措置システムTRIMAを新規立ち上げ
(マレーシア)
クアラルンプール発
2024年10月31日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)は10月30日、公的部門のデジタル化の一環として、貿易救済措置調査管理システム(TRIMA)を立ち上げた(MITIフェイスブック)。TRIMAは、貿易救済措置にかかる調査手順を合理化した、当事者にとってより効率的かつアクセス容易なプラットフォームとして構築された。
式典で基調講演を行ったリュー・チントンMITI副大臣は、同省の重要な使命として、貿易投資の促進のみならず、対等な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)の確保があると強調。その手段としてMITIは、製造業を中心とした国内産業を保護すべく、1993年相殺関税法およびアンチダンピング(AD)法や、2006年セーフガード法の下で、各貿易救済措置の調査を行う権限を持つと説明した。
同氏によれば、マレーシアは1993年以降、AD措置を68件発動。2024年だけでも、鉄鋼、建材、化学、プラスチックなどの産業からAD調査の申請を12件受け付けた。2016年から2024年6月にかけて、5億リンギ(約175億円、1リンギ=約35円)のAD税を徴収した。こうした数字は、国内生産者がダンピングによる損害に直面していることを裏付けるものだ、とリュー氏は述べた。
TRIMAでは、手続きを全てデジタル化することで、セキュリティーは確保しつつも国内外当事者からのアクセスを可能にし、大幅なペーパーレス化とコスト削減を目指す。法定9カ月とする調査期間の短縮にも取り組む。リュー氏は「マレーシアにおける調査期間は現時点でも世界的には短いが、TRIMAはさらに効率化を目指す」と意気込みを見せた。
TRIMAは、進行中の調査のリアルタイム追跡のみならず、過去の調査関連情報へのアクセスも可能とすることで、手続きの透明性を確保する。貿易救済措置に関する全ての事項のシングルウィンドウとしてTRIMAを機能させることで、不公正な貿易慣行から国内産業を適切に保護したい考えだ。将来的には、ビッグデータ分析や人工知能も組み込み、貿易の傾向や潜在的脅威の特定も可能とする。
加えてリュー氏は、1999年を最後に改定されていない、1993年相殺関税およびアンチダンピング(AD)法と関連規則の見直しをMITIが検討していることも明らかにした。現行法は、技術発展やビジネス手法の変化に必ずしも合致していないとし、論理的一貫性の確保やWTO協定との整合性も加味した法規のアップデートが必要だと指摘した。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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