新たなブミプトラ政策を発表、2035年までにGDPへの貢献度倍増へ
(マレーシア)
クアラルンプール発
2024年08月23日
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は8月19日、ブミプトラ(マレー系や先住民族の総称)の経済的地位向上と他民族との経済格差解消を目指す「ブミプトラ経済転換計画2035〔PuTERA(プトラ)35〕」を発表した(首相府ウェブサイト、マレー語のみ)。ブミプトラの経済的地位向上は、国家の中期計画であるマレーシア計画(2023年9月15日記事参照)に常に盛り込まれ、現政権が掲げるマダニ経済政策(2023年8月2日記事参照)とも整合している。プトラ35策定に当たり、さまざまなセクターおよび民族からの意見を取り入れた、と政府は説明した。
GDPへの貢献度倍増など具体的な数値目標を設置
プトラ35は、「経済基盤強化」「ガバナンスにおける協調強化」「社会正義の推進」を支柱に据え、2035年までに達成を目指す目標として次を掲げた。
- 経済参画の拡大:高技能職におけるブミプトラ比率を2022年の61%から70%へ。
- 所有権と管理権の拡大:ブミプトラ個人・団体による企業株式所有率を2020年の18.4%から30%へ、ブミプトラ企業のGDPへの貢献を同8.1%から15%へ引き上げ。
- 社会正義と地域開発の推進:ブミプトラ社会の貧困を終わらせ、他民族との所得格差をなくす。これに向け、東マレーシアなどの発展途上地域の開発を促進する。
政府によれば、過去のブミプトラ開発アジェンダは、貧困撲滅と社会再編、所得格差の是正、株式や財産の所有確保、ブミプトラ企業の競争力強化に重点を置いてきた。ただし、民族間の所得格差拡大、中下流階級への固定化、付加価値の低い経済活動への集中、といった構造的な問題は依然として残っていると指摘した。
非ブミプトラも含めた包摂性も強調
一方でプトラ35は、民族の垣根を越えた真の協力を重視し、全民族が経済成長の恩恵を受けることを目指している。アンワル首相は、「誰も取り残されることなく、国の開発を進めるべきだ」「政策実行において、いかなるグループも疎外されないことが重要」と述べ、華人系やインド系の立場や権利も尊重することを強調した。
プトラ35は、アンワル首相が議長を務めるブミプトラ経済評議会が実施を監督する。経済省がトップダウン式で、同省傘下のブミプトラ・アジェンダ強化ユニット(UPAB)がボトムアップ式で政策を実施し、随時総合的な評価を行う見込み。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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