バングラデシュの防災分野の課題と取り組み、JICAに聞く
(バングラデシュ)
ダッカ発
2024年08月27日
ダッカ中心部では、大規模な自然災害は多くはないが、5月末に2024年初の大型サイクロンが上陸した際に、ダッカ中心部でも暴風大雨に見舞われた。国家災害対応調整センター(NDRCC)によると、全国で約3万5,000戸が全壊、約11万5,000戸の家屋が一部損壊した。この8月22日には、バングラデシュ南東部の一部地域(チョットグラム、フェニ、クミラなど)で洪水が発生、少なくとも300万人近くが影響を受けている。
国際協力機構(JICA)は1970年代から、こうした自然災害への対策において、技術支援やインフラ構築による支援を展開している。今般、ジェトロはJICAバングラデシュ事務所防災・気候変動セクター担当(当時)の伊藤大介氏に、課題への取り組みを聞いた(インタビュー:6月5日)。
(問)バングラデシュにおける自然災害・気候変動対策の課題は。
(答)精度の高い予警報の伝達、災害情報の迅速な発信や被災後の復旧・復興、さらに国民の防災にかかわる対応能力向上が課題としてある。それらの対応が不十分と考えられ、大きな被害に至ってしまうケースが定期的にみられる。JICAは、バングラデシュ政府ほか、現地のNGO団体などとも連携して学校での防災教育を行っている。子供たちがそこで得た学びを、家族や地域の人たちと共有してくれることを期待している。
(問)(今年5月にも発生した)サイクロン関連の取り組みは。
(答)JICAが気象局と連携して2024年1月に装備したダッカ近郊の気象レーダー観測により、サイクロンの位置などの予測が大幅に改善された。このレーダー観測データによる気象予報の精度は改善の余地がまだあり、気象局の継続的な課題と認識している。また同サイクロンにより、南西部でJICAが円借款により支援・設置した堤防にも被害があったため、その復旧に向けた調査を進めている。
(問)その他の取り組みは。
(答)主に風水害対策、防災行政能力強化、都市部の建物安全化促進の3本を軸に活動している。また、防災対策と経済成長は切り離せない関係にある。災害発生時の被災リスクや経済損失を少しでも抑えるため、JICAでは事前防災投資を促進する一環として、日本の国土交通省からの治水分野の有識者の専門家派遣や技術協力プロジェクトによる地方防災計画整備、洪水対策マスタープランの策定を行っている。さらに耐震分野では、ダッカ市内のミルプール10地区で首都防災拠点となる消防本庁新規建設を計画中であり、ここに日本の耐震技術を導入する予定だ。バングラデシュの防災分野において、災害に対する多くの知見や技術を持つ日本が果たす役割は大きいと考えている。災害対策は一朝一夕では成果が見えず継続した取り組みが必要であるため、地道に「細く長く」、バングラデシュと日本が二人三脚となっての支援の継続が肝要だ。より多くの日本の企業関係者の方々に、バングラデシュにおける災害、対策などについて、関心を持っていただけるよう、さらなる情報発信にも努めていきたい。
なお、世界銀行は2024年6月、バングラデシュの社会課題の1つである自然災害・気候変動対策に関連して、主要な都市の災害対策の推進のための融資支援プログラムを発表している。
(山田和則、和田ちひろ)
(バングラデシュ)
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