中部クアンチ省、空港建設に着工

(ベトナム)

ハノイ発

2024年07月19日

ベトナムのクアンチ省人民委員会と、複合企業T&Tグループ、第4交通インフラ建設総公社(CIENCO4)は7月6日、中部クアンチ省でクアンチ空港建設プロジェクトの着工式を行った。

同空港は2023年6月に公布した2030年までの全国空港開発計画に関する首相決定648/QD-TTgに基づいて建設される空港の1つ(2023年6月19日記事参照)。総投資額は5兆8,000億ドン(約360億円、1ドン=約0.0062円)で、クアンチ省人民委員会、T&Tグループ、CIENCO4の共同事業体による官民パートナーシップ(PPP)方式で建設する。空港建設地は、中部最大の都市ダナンから約200キロの同省ゾーリン県内に位置し、面積は265ヘクタールに及ぶ。24カ月の建設期間を経て、2026年7月に開業予定だ。年間500万人の旅客者と2万5,500トンの貨物輸送に対応可能な設計とする。

着工式で同省のボー・バン・フン人民委員長は「空港の完成により、自然保護区や歴史遺跡など観光資源の強みを生かすことができる。また、太陽光発電や風力発電などの開発が加速すれば、クアンチ省が中部地域のエネルギー産業の中心になる」と期待を寄せた。

空路によるアクセスや物流の向上は、観光やエネルギーだけではなく、製造業の進出も促進する可能性がある。これまで同省をはじめとする中部地域には、外資系製造業の投資があまり進んでいなかったが、高速道路の延伸や、ハノイ市、ホーチミン市近郊の土地賃料や人件費の高騰などに伴って近年、進出への関心は高まっている。

クアンチ省では既に住友商事がベトナム・シンガポール工業団地(VSIP、ベトナムとシンガポール両国の国営企業による合弁企業)、タイ資本のアマタシテイ・ビエンホアとの合弁事業で、クアンチ工業団地の開発を進めている。2024年に予定する着工に先駆け、2023年12月に入居企業の募集を開始している。

なお、同省と隣接する北側のクアンビン省、南側のトゥアティエン・フエ省にも空港がある。クアンチ空港予定地から両空港には車で2時間程度のため、利用者の奪い合いを招く可能性もある。同空港の需要を拡大するには、空港建設と並行して、観光客や企業のソフト・ハード両面での受け入れ環境整備や物流機能の強化などが求められる。

(グエン・ラン)

(ベトナム)

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