英政府が年金制度の見直しを発表、投資の促進に焦点
(英国)
ロンドン発
2024年07月30日
英国のレイチェル・リーブス財務相は7月20日、年金制度の見直しを実施すると発表した。年金基金の投資を促進し、年金制度における無駄の解消に取り組むとしている。発表では、特に確定拠出年金制度に注目をしているとした。同制度は10年後までに約8,000億ポンド(約158兆4,000億円、1ポンド=約198円)の資産を管理することになると予測しており、その資産の一部でも生産的な投資にシフトさせれば、経済成長に資すると主張した。
今回発表された見直しは投資に焦点を当てたもので、年金の状況を見直す第1段階であり、財務省と雇用・年金省のエマ・レイノルズ年金担当相が共同して主導する。2024年中に開始される第2段階の見直しでは、退職時に必要な年金収入額の再評価を含め、年金運用の成果を改善し、英国への投資を増やすためのさらなる措置が検討される。
生活費危機により貯蓄率は上昇傾向
英国国家統計局(ONS)は7月22日、2020年から2024年の家計貯蓄に関する統計データを発表した。家計貯蓄率(注1)は、この期間に2度、上昇トレンドを迎えたとした。1回目は、新型コロナウイルス感染拡大による社会的交流と物理的な移動の制限、および実店舗サービスの閉鎖により貯蓄率が急上昇し、2020年第2四半期(4~6月)には27.4%を記録した。2回目は、生活費の高騰や金利の上昇により、2022年第2四半期の6.6%から2024年第1四半期には11.1%へ上昇した。
家計貯蓄率は、新型コロナ禍以前と比較し増加傾向が続いている。所得増加に伴い世帯の総資産額が新型コロナ禍前の水準を上回った一方、家計消費の伸びは比較的抑制されていることが要因となっている。一方で、OECDによれば欧州諸国との比較では2022年の英国の純家計貯蓄(注2)率はEU平均を下回っており、スイス、オランダ、ルクセンブルクなど家計貯蓄率が高い国と大きな差がある。
(注1)家計貯蓄率とは、家計の可処分総所得に年金の積み立てを加えた額に占める貯蓄可能額の割合を推計したもの。
(注2)純家計貯蓄は、固定資本の減耗分を差し引きした家計純可処分所得に年金受給資格の調整を加え、家計最終消費支出を差し引いたもの。純家計貯蓄率は純家計可処分所得に対する純貯蓄総額の割合を表す。
(松丸晴香)
(英国)
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