米商務省、懸念される外国の安全保障サービスに対する輸出や支援を制限する規則案を発表
(米国)
ニューヨーク発
2024年07月29日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は7月25日、国家安全保障の確保と人権保護を目的に、懸念される外国の軍事・インテリジェンス・安全保障サービスに対する輸出、再輸出、支援などを制限する規則案を発表した。
規則案は2つに分かれており(官報/官報
)、BISの発表によると、今回改定される内容は次のとおり。
- 米国人(注)の活動に対する規制拡大:懸念される最終用途(エンドユース)および最終使用者(エンドユーザー)に対する、軍事、インテリジェンス、安全保障サービスに関連する特定の外国原産品の取得支援、および当該産品の保守、修理、オーバーホール(分解・点検)といった米国人の活動を規制。
- エンドユースおよびエンドユーザーに対する規制拡大:輸出管理規則(EAR)の全対象品目に課される規制を、米国の武器禁輸措置を受けている国の軍または国家警備隊、ならびに40カ国以上の懸念国の民間または軍事インテリジェンス機関(インテリジェンス・エンドユーザー)に対して輸出などする際にも適用。併せて、規制品目リスト(CCL)の全品目に適用される規制を、米国の武器禁輸対象国の安全保障エンドユーザー(警察や治安機関など)または軍事支援エンドユーザー(防衛関連企業など)に輸出などする際にも適用。
- 品目規制の拡大:人権保護のため、大規模監視を可能にする特定の顔認識技術の輸出を新たに規制。
米通商専門誌「インサイドUSトレード」(7月25日)によると、今回規制される米国人の活動には、規制対象の潜水艇への照明システムの設置、規制対象国の軍から発注された電子機器メーカーによる集積回路の開発支援などが例示されている。ただし、EAR対象品目に関連する活動のみが対象となるため、出版物、学術機関によって公開されたもの、基礎研究によって生じたソフトウエアや技術などに関連する活動は規制されない。
また、安全保障エンドユーザーに対する規制拡大は、EAR上の国別グループD:5および、キューバ、イラン、北朝鮮、シリアで構成されるグループEを対象としたもので、これらの国の安全保障エンドユーザーに輸出などする際、CCLに記載されている全ての品目に対して輸出許可(ライセンス)申請が課される。顔認証技術への規制については、「人工知能(AI)技術と結びついた顔認識技術は、法執行機関(地方自治体、地域、国)やその他の政府関連団体などの安全保障エンドユーザーの能力を強化し、より高い確率で被害者を標的にすることができるようになり、人権の侵害や乱用につながる可能性が高まる」と規制導入理由を紹介している。
BISはまた、今回の規則案は、国際武器取引規則(ITAR)に基づき国務省の防衛取引管理局(DDTC)が行っている、防衛サービスに対する輸出管理を補完するものだとしている。DDTCは同日、防衛サービスの定義や規制の範囲を改定する規則案を発表している(官報
)。
いずれの官報も正式には7月29日に公示され、パブリックコメントは連邦政府のポータルサイト(ID:BIS-2024-0029、BIS-2023-0006、DOS-2024-0023)から提出可能できる。締め切りは、いずれも9月27日としている。
(注)米国人には、米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、または米国内に存在するあらゆる個人が含まれる。
(赤平大寿)
(米国)
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