米カリフォルニア州、ホームレスの路上生活の拠点の撤去にかかる知事令を発令
(米国)
サンフランシスコ発
2024年07月29日
米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は7月25日、ホームレスの路上生活者の拠点の早期撤去に向けた知事令を発令した。
知事令は、連邦最高裁判所が6月に、公共の場所での路上生活を禁止するオレゴン州グランツパス市の法令を容認したことを受け発表されたもの。州政府機関に対し、州所有地内のホームレスの拠点を早期に撤去するよう命じると同時に、ホームレスを援助・支援することを指示している。さらに、法的拘束力はないものの、州機関と同様の対応を市や郡にも求めている。
ニューサム知事は、「これまで裁判所は、州を含む自治体がホームレスの路上生活の拠点を撤去する権限を認めていなかった。カリフォルニア州は、かかる危機的状況に対処するために懸命に取り組んできた。もう言い訳はできない。今こそ、自分の役割を果たすときだ」と声明で述べた。
知事令に対して、ホームレスの支援を行う団体などからはシェルターがすでに満杯であるにもかかわらず、ホームレスを現生活拠点から追い出すことに対する反発の声があがったほか、ロサンゼルス市のカレン・バス市長(民主党)は、「住宅とサービスを提供する包括的なアプローチをとったロサンゼルスでは、ここ数年で初めて今年ホームレスの数が減少した」と述べ、ホームレスの排除につながる知事令に懸念を示した。
他方、同州上院共和党のブライアン・ジョーンズ議員は、2024年2月に提出した類似した内容の法案が否決されたことにより、取り組みが遅れたことを指摘しつつも、知事令に賛意を示した。さらに、サンフランシスコ市のロンドン・ブリード市長(民主党)の報道官は、路上生活拠点の撤去に向けて、同市はすでに取り組みを開始しており、ホームレスによる路上のテント数は5年ぶりの低水準になっていると主張した(CNN7月26日)。
全米のホームレスの約3割がカリフォルニア州に
米国住宅都市開発省の調査によれば、2023年の全米のホームレス人口は約65万人と、調査開始以来最多になった。そのうち、カリフォルニア州が18万1,000人で最多、ニューヨーク州10万3,000人、フロリダ州3万人、ワシントン州2万8,000人と続く。カリフォルニア州のホームレスに占める路上生活者の割合は68.0%と全米で最も高く、次いでオレゴン州64.6%、ハワイ州62.8%となっている。
(芦崎暢)
(米国)
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