先進的でレジリエントな電力網技術開発に取り組む米SCネクサス、テックハブの助成金獲得
(米国)
アトランタ発
2024年07月03日
米国のバイデン政権が7月2日に発表した助成金を提供する国内12カ所のテックハブ(2024年7月3日記事参照)の1つに、サウスカロライナ州とジョージア州の「先進的でレジリエントなエネルギーのためのSCネクサス(SC Nexus for Advanced Resilient Energy)」が選定され、推定4,500万ドルの助成が決まった。
SCネクサスはサウスカロライナ州商務省が主体となり、大手電力会社デュークエナジーのほか、同州に立地する京セラAVXや英国のロールス・ロイスといった24社の民間企業やサバンナリバー国立研究所(注1)など、52の組織が参画するコンソーシアム。2034年までにサイバーセキュアでレジリエントな電力網(グリッド)技術(GRTs、注2)で世界的なリーダーとなることを目指している。さらに、ジョージア州のアイゼンハワー陸軍基地にあるサイバー研究拠点やサイバー司令部とも連携を強化している。
SCネクサスでは、今回の助成金を活用して次の4つのプロジェクトに取り組み、サウスカロライナ州商務省内に同ハブを専門に扱う部署が設置される予定だ。
- コスト削減と機能向上を実現したバッテリー蓄電システムの技術革新と、商業化を促進するための実証製造インフラの拡大。
- 既存のGRTs用試験施設を改良し、多用途、再構成可能、移動可能な25メガワット(MW)の試験施設とリアルタイムの送電網エミュレーター(注3)を構築。
- 送電網のハードウエアとソフトウエアに対するサイバーフィジカル保証(注4)を実施し、送電網のサイバー防衛に携わる人材を訓練するための本格的なマルチモーダル送電網運用センターを開発。
- GRTsに関するキャリアについての認識を高め、技能訓練を提供し、労働力の参加を妨げている育児や交通などの重要な支援サービスの不足に対処。
助成金獲得を受け、サウスカロライナ州のヘンリー・マクマスター知事(共和党)は「本日はサウスカロライナ州とSCネクサス、そして、わが州のエネルギーの未来と経済競争力を強化する取り組みにとって、変革の日だ」と述べた。なお、当初申請していた6つのプロジェクトのうち、2つは助成金の対象とならなかった。対象とならなかった起業家支援のプロジェクトは今後、資金確保を最優先事項として取り組む一方、水素関連のプロジェクトは計画を練り直す。
SCネクサスのコンソーシアムへの参画に関心のある企業は、コンソーシアムメンバー関心フォームからサウスカロライナ州商務省へ問い合わせ可能だ。
(注1)全米に17カ所ある米国エネルギー省管轄の研究機関の内の1つ。原子力を中心としたエネルギー関連や化学、材料製造などの分野で世界トップクラスの研究で知られている。
(注2)SCネクサスでは、GRTsを分散型エネルギー資源(DERs)および統合・管理ツールと定義しており、送電網の信頼性、適応性、安定性を高め、送電網の途絶に持ちこたえ、そこから迅速に回復することができ、信頼性が高くサイバーセキュアな電力供給を可能にする技術としている。
(注3)異なる環境を模倣し、動作を確認する装置。
(注4)サイバー攻撃が現実世界(フィジカル)へ影響を及ぼさないよう、セキュリティー対策が取られていることの保証。
(檀野浩規)
(米国)
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