韓国政府、「2024年下半期経済政策方向」を発表、GDP成長率を上方修正

(韓国)

調査部中国北アジア課

2024年07月05日

韓国政府は7月3日、「2024年下半期経済政策方向」を発表し、2024年の実質GDP成長率見通しを従来の2.2%から2.6%に上方修正した(2024年1月23日記事参照)。同数値は、韓国銀行(中央銀行)が5月に発表した見通し(2.5%)よりも0.1ポイント高い(2024年5月29日記事参照)。政府では、下半期の輸出については、世界経済の緩やかな成長基調が続いていることや、人工知能(AI)需要拡大などに伴う半導体景気の好転により、回復基調が続くとみている。一方で、内需については、物価上昇率の鈍化などで個人消費は回復に向かい、輸出回復に伴い設備投資も回復するとみている半面、建設投資は不動産プロジェクトファイナンス・リスクなどにより不振が続く見通しとしている(添付資料表参照)。

同政策方向では、1月4日に発表した「2024年経済政策方向」で講じた政策課題を滞りなく推進し、民生安定と景気回復に特化した政策対応を強化するとしている。特に、(1)中小企業・一般市民支援(2)物価安定・生計費軽減(3)建設投資などの内需下支え(4)潜在リスクの管理、の4つの柱を重点的に推進していく。それぞれの概要は次のとおり。

(1)中小企業・一般市民支援:「中小企業・個人事業主総合対策」を策定し、配送料、賃貸料、電気料金などの負担の緩和、債務整理の対象拡大、店舗解体費用の支援額増加などを行う。また、民生安定助成金を1兆ウォン(約1,200億円、1ウォン=約0.12円)投入し、自営業などの小規模事業者および青少年・高齢者などへの支援・集中投資を行う。

(2)物価安定・生計費の軽減:農水産物の割引支援、エネルギーバウチャー制度の強化など、物価管理および生計費負担軽減のために約5兆6,000億ウォンを支援する。

(3)建設投資などの内需下支え:公共投資、民活事業、政策金融の下半期の投資・融資規模を2024年当初の計画から15兆ウォン拡大し、建設投資などの活性化を図る。

(4)潜在リスク管理:不動産プロジェクトファイナンス(PF)の市場安定化を図り、事業別の管理、評価基準、支援体制を強化する。

また、韓国政府は、同政策方向と同日に「ダイナミック経済ロードマップ」を発表した。同ロードマップでは、国民の生活の質的向上、持続可能な経済成長強化を目標に掲げ、(1)革新的な生態系の強化(生産性の高い経済システムの構築やグローバルネットワークの拡大など)(2)公平な機会の保障(正当な補償制度の強化など)(3)社会移動性の改善(家計可処分所得・資産の増加、教育システムの改善など)の3つの柱を挙げている。

同政策方向およびロードマップ発表に際して、韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「現在の韓国経済は正常化が進んでおり、今後は金利の低下も見込める」と評価した(「中央日報」7月3日)。一方で、「ヘラルド経済」(2024年7月4日、社説)は同政策方向に関して、家計と事業経営の基盤となり、景気予測をするうえで重要な基準となるとし、国民や野党の信頼を得たうえでの経済政策の必要があるとした。

(益森有祐実)

(韓国)

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