オープンAI、中国のデベロッパーに対しアクセス禁止へ
(米国、中国、香港)
サンフランシスコ発
2024年07月03日
米国のオープンAI(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ)が、香港を含む中国のデベロッパーに対し、同社のAPIプラットフォーム(注1)へのアクセスを禁止した、と複数のメディアが報じた。チャットGPTは中国本土では利用できないが、多くのスタートアップや開発者は仮想プライベートネットワーク(VPN、注2)やその他の手段を使って、同社のAPIプラットフォームにアクセスし、独自のアプリケーションを構築しているという。
オープンAIの広報担当者は、オープンAIのサービス対象外地域から同社のAPIへのアクセスをブロックするため、追加措置を取ると述べたという(ロイター6月25日)。また、中国側のユーザーは6月24日に、オープンAIのAPIへのアクセスを7月9日から禁止する旨のメールを受け取ったという。
オープンAIのこうした動きは、米国財務省から発表された対外投資プログラムの規制案発表(2024年6月24日記事参照)に続き、中国から米国の人工知能(AI)や半導体の最先端技術に対するアクセスを制限する動きと重なる。
これに対し、中国の主要なAI開発者である智譜AIをはじめ、百度、アリババクラウドやテンセントは、それぞれ自社のプラットフォームへの無料移行を提供している、と報道されている(「タイム」誌電子版6月26日)。中国の主要な大規模言語モデル(LLM)を提供する企業はオープンAIのツールへのアクセス禁止から利益を得るかもしれないが、小規模開発者は業界ベンチマークであるツールを使用できないことで、淘汰(とうた)される恐れがある。アリババグループのジョー・ツァイ会長はこの措置に対し、中国のAI開発者がグローバルなツールへ長期間アクセスできないため米国に遅れを取る可能性があり、進捗を取り戻すのに少なくとも2年はかかるだろうと述べた。
(注1)アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)の機能を提供するための基盤や環境のこと。APIはソフトウェアやプログラム、ウェブサービスの間をつなぐ仕組みのこと。
(注2)インターネットなどの公共ネットワーク上にプライベートな通信路を確立する技術。データが暗号化され、通信内容が第三者に漏洩(ろうえい)するリスクが低くなる、ユーザーのIPアドレスが隠される、遠隔地からでも企業内部のネットワークにアクセスすることや、アクセスが制限されているコンテンツやサービスの利用が可能になる。
(松井美樹)
(米国、中国、香港)
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