シンガポール政府投資会社テマセク、中国への投資縮小、インドに着目

(シンガポール)

シンガポール発

2024年07月18日

シンガポール財務省管轄下の政府系投資ファンドのテマセク・ホールディングスは7月9日に発表した2024年3月期の年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、同社の投資ポートフォリオの対象地域として、中国の割合が19%と、2023年の22%から縮小したことを明らかにした。一方、インドや欧米の投資を拡大した。日本への投資も拡大するとしている。

テマセクは、1974年にシンガポール・テレコムなど国内戦略企業の投資持ち株会社として発足した。2002年からアジアを中心に海外での投資活動を活発化し、2004年から年次報告書を公表している。同社のポートフォリオの純資産総額は2024年3月期に3,890億シンガポール・ドル(約45兆9,020億円、Sドル、1Sドル=約118円)と、前年と比較して70億Sドル増加した。

テマセクの投資ポートフォリオの対象地域に占めるシンガポールの割合は2004年3月期には52%だったが、2024年3月期に27%に縮小した。シンガポール、日本を除くアジアの割合は2004年3月期の16%から、2014年3月期には41%に拡大したのち、2024年3月期に38%へと縮小した(添付資料図参照)。テマセクは2014年3月に英国ロンドン、同年6月に米国ニューヨークに相次いで拠点を開設し、その他の地域(欧州、オーストラリア、米州を含む)への投資割合は2014年の18%から2024年の35%へと拡大した。

地場の英字紙「ビジネス・タイムズ」紙(7月9日付)によると、テマセクのチア・ソンヒー副最高経営責任者(CEO)は中国への投資について、今後、関税紛争などに影響されやすい輸出に依存する企業よりも、国内需要の恩恵を受ける企業に照準を当てる方針を示した。また、インドの投資割合は2023年3月期の6%から、2024年4月期に7%に拡大した。テマセクは、インド経済がインフラ整備を中心とした資本支出や民間消費に牽引されて成長すると見込んでいる。

一方、テマセクの日本への投資割合はほぼゼロから約1%へと拡大し、今後も投資が拡大する見込みだ。テマセクのベンチャーキャピタル子会社バーテックス・ホールディングスは2024年5月17日、日本のスタートアップに投資する総額100億円のファンド「バーテックス・ベンチャー・ジャパン1号ファンド」の設立を発表していた。

(本田智津絵)

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