運賃高騰などの影響が続く物流、日系輸送会社に聞く
(中国)
青島発
2024年07月12日
昨今の世界的なコンテナ不足などによる輸送運賃の高騰は、日系企業にとっても大きな懸案の1つとなっている。ジェトロはNX国際物流(中国)青島分公司の担当者に、同社の取り組みと現地物流の現状について聞いた(7月5日)。概要は次のとおり。
(問)貴支店の取り組みについて。
(答)山東省青島市に所在する当青島支店は、山東省・河南省の全域と、中国の有力貿易港を擁する連雲港(江蘇省)を束ねる。日本向けの輸送が大半を占めるが、顧客は中国地場企業も多い。山東省では海運の需要が高く、取り扱う品目としては電子機器関連・建機関連・タイヤ・衣料品などを中心に幅広い。
活用する輸送手段としては、海上輸送が約8割を占めている。日本~山東省間の海上輸送に要する日数は早くて2~4日、航空輸送の場合は1~2日かかる。これらの日数に大きな差がないため、後者は緊急品やサンプル取り寄せに際しての需要が多い。管轄する河南省鄭州市などに欧州まで伸びる鉄道「中欧班列」(注1)の起点があるため、その活用も推進している。地政学的リスクが課題だが、徐々にセールスの成果が出始めている。
(問)海上輸送の現状について。
(答)1コンテナ当たりの価格は、2024年1月から2月の中国の旧正月前までにかけてピークを迎え、その後は一時的に下落傾向に転じたが、再び上昇に転じ、例年より高く推移している。現時点で、青島発対東南アジアで2~2.5倍、対欧米で2~3倍程度へと上昇している。貨物船の滞留などは発生していない。青島では5~6月にかけて季節的に濃霧が発生し、そのための一時的な沖待ちは生じるが、持続的・常態的なものではない。
中国〜欧州間の海上輸送に要する時間は通常で30〜40日。しかし、現在はスエズ運河迂回の影響があり、プラス10日間程度必要となり、価格上昇をもたらしている。航海時間が伸びるため、必然的に燃料コスト増大とコンテナの回転率低下につながっている。また、中国からタイ、ベトナムといった国々への生産拠点の移管に伴う、それらの国々への中国産資材の輸出需要の増大も価格上昇の背景にある。さらには、米国の一部製品に対する対中関税引き上げ(2024年5月23日記事参照)、ブラジルの電気自動車に対する関税引き上げに伴う駆け込み需要などの発生も影響を及ぼしている(2023年12月18日付地域・分析レポート参照)。
(問)鉄道輸送(中欧班列)活用の現状について。
(答)以前は、積み替えを行う国境で滞留が生じ、活用を見送る状況もあったが、現在は落ち着き、そのような状況は聞かれない。一方で、顧客側では、トラブル発生時のリスクを念頭に活用には抑制的ではあったが、最近になりBCP(注2)の観点から状況確認のための照会は増えてきている。なお、当地からの鉄道輸送にはロシアを通過しない南側のルートもあるが、そちらは鉄道輸送区間の一部、および黒海を横断する海上輸送部分の定時性に課題があるため、好まれていない。
(注1)中国と欧州や中央アジアなどを結ぶ国際貨物列車。
(注2)Business Continuity Plan(事業継続計画)の略。災害や事故などによって「重要な事業」が中断しないよう、また中断してしまった場合でも早期に再開できるようにしておくための計画を指す。
(吉川明伸)
(中国)
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