EU、対ロシア制裁第14弾を採択、第三国向けLNGの域内積み替えを禁止
(EU、ロシア、ウクライナ)
ブリュッセル発
2024年06月26日
EU理事会(閣僚理事会)は6月24日、第14弾となる対ロシア制裁パッケージを採択した(プレスリリース)。今回のパッケージには、エネルギー、金融、交通分野の制裁のほか、既存の制裁の迂回防止強化策が含まれる。
エネルギー分野では、ロシア産液化天然ガス(LNG)をEU域内で第三国向けに積み替えることを禁止する。禁止措置の対象には、積み替え作業のほか、Ship to Ship方式やShip to Shore方式でのLNGの供給も含まれる。ただし、6月24日までに締結された積み替え契約については、禁止措置の適用は2025年3月27日以降となる。また、アルクティクLNG2やムールマンスクLNGといったロシアで建設中のLNG事業に対する新規投資や完成に向けた製品、技術、サービスの提供も禁止する。
金融分野では、国外送金の国際銀行間通信協会(SWIFT)システムに相当する、ロシア中央銀行が開発した「金融メッセージ転送システム(SPFS)」の使用を禁止する。第三国で営業するEUの銀行によるSPFSへの接続のほか、SPFSを使用する第三国の指定銀行との決済も禁止する。また、ロシア軍事産業に資する決済を行うロシアあるいは第三国の指定銀行などとの決済も禁止する。
交通分野では、ロシアによるウクライナ侵攻に貢献する指定船舶によるEU域内港湾へのアクセスや、こうした船舶へのサービス提供を禁止する。また、ロシア航空機に対するEU域内の発着および領空通過の禁止措置を、ロシア国籍者あるいは法人が実質的に運航を決定するチャーター機に拡大する。ロシアの道路輸送事業者によるEU域内輸送の禁止措置も、ロシア国籍者あるいは法人が25%以上を保有するEU事業者に拡大する。
制裁迂回回避の強化策としては、EUの親会社に対して、第三国の子会社が制裁迂回につながる、いかなる活動にも参加しないよう最善の努力を尽くすことを求める。また、戦場で使用される製品を第三国に輸出するEUの事業者に対しては、製品がロシアに再輸出されるリスクを特定、評価、緩和するためのデューデリジェンスの実施を求める。
さらに、輸出入規制の対象製品を拡大する。全地形対応車、電子レンジ、フライトデータレコーダーなどを輸出規制の対象に追加。化学品、プラスチック、自動車部品、機械部品などの特定の産業製品や、マンガン鉱を輸出禁止にする。ロシア産ヘリウムの輸入規制についても強化する。
(吉沼啓介)
(EU、ロシア、ウクライナ)
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