国営石油会社ペトロブラスのCEOが交代、国内造船業の再生に注力
(ブラジル)
サンパウロ発
2024年06月03日
ブラジル国営石油会社ペトロブラスは5月15日、ジャン・ポール・プラテス最高経営責任者(CEO)の退任を発表した。鉱山エネルギー省はその後任として、元国家石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)長官のマグダ・シャンブリアール氏を指名した。同氏の正式就任は5月24日のペトロブラスの取締役会によって承認された。
14日付現地紙「エスタード」によると、プラテス氏の退任理由としては、国内石油精製業への投資拡大や、現地生産率の高い浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)や支援船の発注など、連邦政府が期待していたペトロブラスによる国内産業活性化計画の実施が遅れたためとしている(注1)。また、アレシャンドレ・シルベイラ鉱山エネルギー相は21日に記者団に対し、「(プラテス氏が退任になったのは)ルーラ大統領がペトロブラスによる投資ペースを加速する必要があると考えたからだ」と説明した上で、「(ペトロブラスは)ブラジルの経済発展に貢献しなければならない」と強調した。
シャンブリアール氏の任命に際して、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は国内造船業の再生を重要課題として強調しており、同氏もこの分野に注力する予定だ。また、ブラジルの経済発展を支えるために、国内の製油所やガスラインの整備を進めることも期待されている。
5月15日にペトロブラスの普通株価(PETR3)は6.64%、優先株価(PETR4)は6.04%急落した(注2)。同日付の現地紙「CNNブラジル」では、ゴールドマン・サックスのブルーノ・アモリン経済アナリストは「今回の(退任の)発表でペトロブラスに対する政治的介入への心配が再び高まる可能性がある」と指摘した。一方、シルベイラ鉱山エネルギー相は21日に記者団に、「ペトロブラスは政府によって支配されている企業だ(注3)。(新CEOの指名を)『介入』と名付けることは適切ではない」と述べた。
(注1)4月18日付ペトロブラス公式サイトで発表した投資計画によると、ペトロブラスは国内造船業の活性化に向けて、2028年までにFPSOを14隻、支援船を200隻発注する予定がある。ただし、現地生産率を高める方針についての詳細は発表されていない。また、ペトロブラスは5月24日にシンガポールの海洋エンジニアリング大手シートリウムに2隻のFPSOを発注したことを発表したが、現地生産率はそれぞれ20%程度にとどまる見込みだ。
(注2)普通株(PETR3)は、株主に議決権が与えられ、会社の重要な決定に対して投票する権利を持つ。優先株(PETR4)は通常、議決権を持たない代わりに、配当金の支払いで優先される特典がある。また、会社が清算される際には、普通株よりも優先的に資産の分配を受ける権利がある。
(注3)連邦政府はペトロブラスの普通株の50.26%を有する。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル)
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