職業上の安全および健康に関するILO第155号条約を批准、関連国内法施行と足並みそろえ
(マレーシア)
クアラルンプール発
2024年06月13日
マレーシアのスティーブン・シム人的資源相は6月11日、ILOの1981年の職業上の安全および健康に関する条約(第155号)の批准書をILO事務局に寄託した(ILOプレスリリース
)。第155号条約は、5分野10条約のILO基本条約(中核的労働基準)(注)の1つ。就業に関連した事故や健康障害を防止することを目的に、職業上の安全および健康、ならびに作業環境について加盟国が一貫した政策を策定するとともに、その実施のために必要な措置がとられるべき旨を規定する。
第112回ILO総会参加のためスイス・ジュネーブを訪問中のシム人的資源相は、この批准を「労働者保護を推進するマレーシア政府の継続的な取り組みの一環」と説明。「(第155号条約の批准により)労働安全衛生という本質的人権の側面で、マレーシアの労働基準はさらに向上するだろう」と見通した上で、今後も「マレーシアは持続可能な開発のための2030アジェンダに沿って、特に社会正義とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進するため、ILOとの協力を継続、強化する」と述べた。
この関連で、マレーシアは2024年6月1日に「2022年労働安全衛生(改正)法(第1648号)」を施行した。同法は、「1994年労働安全衛生法」の改正法にあたり、旧法と比較して、適用対象となる契約関係の拡大、従業員の権利拡張、従業員の健康や安全を確保しない雇用主に対する罰則の強化、といった変更が加わった。第155号条約への批准は、労働安全衛生に関する政策や、上記の改正法を含む国内法を補完するものと位置付けられる。
ILO関連条約へのマレーシアの加盟状況は、ILOの国別ウェブサイトで確認できる。最近では2022年3月、1930年強制労働条約(第29号)の2014年議定書を批准し、強制労働の防止に取り組む姿勢を打ち出していた(2022年3月25日記事参照)。
人的資源省によれば、今回のスイス訪問では、第155号条約批准のほか、労働と人材開発分野での協力につきフィリピンやネパールとも2国間会談を行う予定。マレーシアの国内労働基準を国際レベルに合わせ改善する政府の決意を示す外遊だ、と説明している。
(注)5分野とは、結社の自由および団体交渉権の実効的な承認、あらゆる形態の強制労働の撤廃、児童労働の実効的な廃止、雇用および職業についての差別の撤廃、安全かつ健康的な作業環境。第155号条約を含む第5の分野は、2022年の第110回ILO総会で追加。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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