米下院議員団、国土安全保障省による中国系企業6社からのバッテリー調達を禁止する法案提出
(米国、中国)
ニューヨーク発
2024年06月11日
米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委)」のジョン・ムーレナー委員長(共和党、ミシガン州)ら共和党下院議員団(注1)は6月7日、国土安全保障省(DHS)による中国系企業6社が製造するバッテリーの政府調達を禁止する法案を提出したと発表した。法案は6月5日付で下院国土安全保障委員会に付託された。
DHSは米国沿岸警備隊や税関・国境警備局(CBP)などを管轄し、重要インフラ・国境警備などを所管している。今回の法案(H.R.8631)は、寧徳時代新能源科技(CATL)、比亜迪(BYD)、遠景能源(エンビジョンエナジー)、恵州億緯鋰能(EVEエナジー)、厦門海辰儲能科技(Hithium)、合肥国軒高科動力能源(ゴーションハイテク)の6社と、これらの承継企業が製造(注2)したバッテリーを調達するために、DHSの資金が使用されることを2027年10月以降に原則禁止する。法案提出を主導したカルロス・ヒメネス下院議員(共和党、フロリダ州)は「われわれは、重要なサプライチェーンの支配を最大の地政学上の競争相手に委ね続けることはできない」と述べている。
法案が成立するには、下院国土安全保障委員会での審議・採決の後、上下両院本会議での審議・採決を経て、ジョー・バイデン大統領による署名が必要となる。今後、これらプロセスに同法案が耐え得るかは現時点では不透明だ。
米国では、政府・議会ともに、中国とのバッテリーサプライチェーンでデリスキングを図る動きが続いている。2023年12月に成立した2024会計年度国防授権法(NDAA)の154条では、今回の法案と同じ6社の製品の国防総省による調達禁止が盛り込まれた。5月には、財務省と内国歳入庁がインフレ削減法(IRA)に基づくクリーンビークルの購入に対する税額控除の対象から、中国などの特定国が関わるバッテリーを用いた車両の除外を含む最終規則を公表した(2024年5月15日記事参照)。同月には、米国通商代表部(USTR)がリチウムイオンバッテリーなどに課す1974年通商法301条に基づく対中追加関税の関税率を7.5%から25%に引き上げると発表した(2024年5月23日記事参照)。さらに、ムーレナー委員長らは6月6日、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づく輸入禁止対象の事業体のリストに、CATLとゴーションを追加指定するよう求める書簡をDHSに送付している(2024年6月7日記事参照)。
(注1)ムーレナー委員長、ヒメネス議員のほか、マーク・グリーン下院議員(共和党、テネシー州)、オーガスト・フルーガー下院議員(共和党、テキサス州)。
(注2)バッテリーを使用する最終製品の組み立て・製造をすること、または、バッテリーに使用される部品の大部分を製造・提供すること。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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