欧州産業連盟、EUの経済安保戦略について提言書発表
(EU)
ブリュッセル発
2024年06月12日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は5月30日、EUの経済安全保障戦略と関連政策パッケージ(2024年1月29日記事参照)に関する政策提言書を発表した(プレスリリース
)。
提言書から読み取れるのは、経済安保の名の下に保護主義的な手段が活用され、単一市場の統合や企業活動の自由が損なわれることへの警戒感だ。競争力を損なうことなく、投資、貿易の「開放性」と「制限的措置」のバランスが取れた戦略形成が必要と主張。戦略で特定されたリスクを徹底的に評価すべきとした。また、措置は的確で均整が取れた予測可能な方法で実施されるべきで、安全保障上の正当な根拠に基づくべきと述べた。加盟国の介入は最終手段とし、EU共通のアプローチを取ることが望ましいとした。
さらに、官民の協力深化も必要と指摘。具体的には(1)企業のリスク特定・対応能力向上のため、企業単独では収集不可能な情報を加盟国が共有する、(2)EUの法令に基づき、EU域外国による経済的威圧から域内企業を適切に保護、(3)EUレベルで有識者を含めた官民のあらゆる関係者が交流する場を設置することなどを提言した。
経済安保戦略で示されたリスク評価に関しては、欧州委員会と加盟国による作業が進行中だが、タイムラインや進捗状況が明確ではないと指摘。評価段階でのパブリックコンサルテーション(公開諮問)の実施など、産業界の意見を聴取し、政策に反映するよう要請した。
戦略で特定されたリスクを軽減するための3つのアプローチの「EUの経済基盤と競争力の強化(Promote)」「リスクからの防衛(Protect)」「可能な限り幅広いパートナーとの連携(Partner)」は平等に扱いバランスが必要とした。欧州委は「Protect」に比重を置き過ぎていると苦言を呈した。
また、輸出管理や対内直接投資に関して、EUレベルでさらに調整を進める必要があるとした。対外投資規制については、慎重にリスク便益を分析し、課題を明確化することが必要とした。このほか、企業が柔軟な対応を取れなくなる可能性があるとして、友好国などに限定したサプライチェーン構築推進に批判的な姿勢を示した。
(滝澤祥子)
(EU)
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