欧州委、EUの2024年GDP成長率を1.0%と予測、緩やかな成長継続を見通す

(EU)

ブリュッセル発

2024年05月24日

欧州委員会は5月15日、春季経済予測を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2024年の実質GDP成長率は、EU27カ国で1.0%、ユーロ圏20カ国では0.8%と予測した。2月の冬季経済予測(中間予測、2024年2月22日記事参照)からEUは0.1ポイント上方修正、ユーロ圏は据え置きとなった。前回の包括的予測である2023年11月の秋季経済予測(2023年11月22日記事参照)からは、EUは0.3、ユーロ圏は0.4ポイントの下方修正となった(添付資料表1、2参照)。2025年の成長率は、EUは1.6%、ユーロ圏は1.4%と見通した。

2023年は経済活動が停滞したが、2024年初めは予想を上回って成長した。インフレ率が継続して低下していることからも、欧州委は緩やかな経済成長を見通す。EUの2024年の成長率は、エストニアを除く全ての国でプラス成長となる見込み。

欧州委によると、継続的な実質賃金の伸びと雇用の拡大は可処分所得の増加を後押しし、個人消費が経済成長を牽引する見込み。同時に、貯蓄性向は依然として強く、個人消費を抑制する側面もあるとした。一方、住宅投資の冷え込みにより、投資の伸びは限定的。投資環境の改善は見込まれるものの、金利の引き下げペースはこれまでよりも緩やかになると市場は予測しているとした。 世界貿易の回復はEUの輸出を後押しするものの、域内の内需回復に伴って輸入は拡大し、輸出のGDP成長率へのプラス寄与度はほぼ相殺される見込み。

ユーロ圏のインフレ率は、非エネルギー財と食品が押し下げ要因となる一方、原油などエネルギー価格はやや上昇傾向にあり、サービス部門のインフレは賃金上昇圧力の緩和によってのみ低下する。EU全体も同様の傾向だが、ユーロ圏よりわずかに高い数字の見通し。

停滞する経済にもかかわらず、雇用は創出されているが、多くの加盟国で労働市場は依然として逼迫している。2024年のEUの失業率は6.1%予測で、「歴史的な低水準」を維持する見込み(添付資料表3参照)。

欧州委は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化と、イスラエルとハマスの衝突により、不確実性と下振れリスクは過去数カ月で一段と高まっているとした。さらに、米国でのインフレ継続によって利下げが遅れ、世界金融が影響を受ける可能性を指摘。域内のインフレ率の低下が予想よりも遅れる可能性にも言及した。今回の見通しには含まれていないものの、一部の加盟国は2025年予算で追加的な財政措置を採用する可能性も指摘した。気候変動に関連するリスクは経済見通しに大きく左右されるとした。

(大中登紀子)

(EU)

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