杭州士蘭微電子、約2,640億円でSiCパワー半導体の工場建設
(中国)
上海発
2024年05月28日
中国の浙江省杭州市に本社を置く半導体メーカーの杭州士蘭微電子は5月21日、福建省アモイ市、同市海滄区と戦略的な提携枠組み協定を締結したと発表した。3者は海滄区にSiC-MOSFET(注1)を主要製品とする8インチウエハー対応のSiCパワー半導体の生産ラインを構築する予定だ。プロジェクトの総投資額は約120億元(約2,640億円、1元=約22円)に上り、第1期(70億元)と第2期(約50億元)に分けて進める。完成後の8インチSiCパワー半導体の年間生産能力は72万枚を予定する。なお、稼働時期は明らかにされていない。
士蘭微電子など3者は、プロジェクトを運営する子会社の厦門士蘭集宏半導体の資本金を従来の6,000万元から42億1,000万元に引き上げると発表。これにより、第1期の投資額のうち約6割を自己資金から拠出する。増資後の出資比率は、士蘭微電子が約25%、厦門市と海滄区の傘下企業2社の合計が約75%となる。
士蘭微電子は1997年に設立。半導体製品の設計、製造から販売までを一貫して自社で行う中国有数の垂直統合型の半導体メーカー(IDM)だ。2003年には上海証券取引所のメインボードに上場した。
同社は近年、大型白物家電や機械制御など向けのディスクリート半導体(注2)、パワーモジュール(注3)の市場拡大を急ぐほか、電気自動車(EV)、新エネルギー分野への進出も加速している。中国では、EVの普及などより、幅広い分野で半導体需要が拡大していることから、同社は関連分野の売り上げが急成長すると見込んでいる。
(注1)MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称で、スイッチデバイスの一種。素材にSi(シリコン)を使った従来製品に比べて、SiC(シリコンカーバイド)を用いることで、高耐圧、低オン抵抗、高速スイッチングを実現するほか、スイッチング損失も低減できる。
(注2)ディスクリート半導体は、「単一目的のために使用される単一機能」の半導体を指す。電流を一方向に流す「ダイオード」や、電流をコントロールする「トランジスタ」などが代表例とされる。これに対し、モジュールは、それ自身が多くの部品を含む「ひとかたまりの部品群」のことを指す。
(注3)パワー半導体を組み合わせたもの。
(劉元森)
(中国)
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