南アジアの経済成長率、インド牽引で2024年は6.2%前後の見通し

(インド、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、ブータン、ネパール、モルディブ)

調査部アジア大洋州課

2024年05月22日

2024年と2025年の実質GDP成長率予測について、IMF、アジア開発銀行(ADB)、世界銀行の3機関は、それぞれ2024年4月版の見通し(注1)を発表した。これらによると、南アジア地域(注2)の2024年の成長率予測は平均6.2%(6.0~6.3%)(注3)だった(添付資料表参照)。

インドについては、平均7.1%(6.8~7.5%)といずれの機関も高い成長率予測を示し、バングラデシュが5.8%(5.6~6.1%)と続いた。その後は、モルディブが5.1%(4.7~5.4%)、ブータンが4.5%(4.3~4.9%)、ネパールが3.3%(3.1~3.6%)、スリランカが2.1%(1.9~2.2%)、パキスタンが1.9%(1.8~2.0%)だった。インド以外のいずれの国も南アジア地域平均の6.2%を下回り、引き続き同地域の成長はインドが牽引する見通しだ。

ADBの分析によると、成長率予測の高いインドでは、強靭(きょうじん)な投資需要と内需の改善が経済成長に貢献。バングラデシュは、衣類品輸出が成長を押し上げるほか、エネルギーや鉄道建設などの巨大インフラプロジェクトが起因して公共設備投資は拡大し、インフレの緩和が見込まれ民間消費支出が改善すると予想した。ブータンについては水力発電プラントの運転開始が、モルディブとネパールは観光業が成長を牽引する見通しだ。パキスタンは、農業や産業面で回復が見られるも、内需については高止まりの生活費と緊縮的なマクロ経済政策によって制約されているとした。スリランカについては、サービス業やビジネス環境改善に向けた改革政策が功を奏するも、増税が原因で民間の消費および投資は弱まる見込みだ。

2025年予測、インド減速も南アジア地域全体では高成長続く

2025年の成長率予測は、南アジア地域が平均6.4%(6.1~6.6%)で地域平均は上昇も、成長を牽引するインドの成長率は6.8%(6.5~7.2%)に減速。他方、バングラデシュは6.3%(5.7~6.6%)、ブータンとモルディブでいずれも5.9%(5.0~7.0%、5.2~6.5%)と高水準での成長が予測されている。

(注1)IMFは4月16日、「世界経済見通し(2024年4月版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表。ADBは4月11日、「アジア開発見通し(2024年4月版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表。世界銀行は4月2日、「南アジア経済報告(2024年4月版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表(2024年4月15日記事参照)。

(注2)南アジア地域:バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ。

(注3)3機関がそれぞれ発表した予測の平均値。かっこ内は各機関の予測値の幅(下限と上限)を示す。ただし、予測値が2機関しか発表されていない国・地域は、2機関分の平均値と幅を表示。なお、ADBと世界銀行の見通しについては、暦年がモルディブ、スリランカ、年度がバングラデシュ、ブータン、パキスタン(以上、7月~翌6月)、インド(4月~翌3月)、ネパール(7月16日~翌7月15日)。IMFの見通しについては、インドとバングラデシュが年度。

(深津佑野)

(インド、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、ブータン、ネパール、モルディブ)

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