深セン市、新築物件の買い替えを後押し

(中国)

広州発

2024年05月16日

中国の広東省深セン市不動産業協会と深セン市不動産仲介協会は4月23日、深セン市の住宅流通促進を目的に、新築物件の買い替え活動を展開すると発表した。

同活動は、不動産デベロッパーと仲介企業が、現在の住まいを売却して新築物件の購入を計画している住民(以下、買い替え者)と契約を締結し、「現在の住まいの売却」と「新築物件の購入」を連動させる仕組みだ。具体的には、デベロッパーは買い替え者が購入したい新築物件に一定期間の「解約保護期間」(90日以上を推奨、以下、保護期間)を設定し、仲介業者は買い替え者の現在の住まいの売却を優先的に推進し、取引(売却と購入)にかかる時間を短縮させる。現在の住まいが保護期間内に売却されれば、デベロッパーと買い替え者は合意どおりに新築物件の売買契約を履行する。一方、現在の住まいが保護期間内に売却できなければ、デベロッパーと買い替え者は合意どおりに売買契約を解除し、デベロッパーは無条件で手付金を返金し、買い替え者は違約責任を負う必要がないとする。

同発表にあわせ、13社のデベロッパーと21社の仲介企業が同活動に参加することも発表された。今後も継続して、デベロッパーと仲介企業の参加募集を拡大していくという。

さらに、深セン市住宅建設局は5月6日、同市で不動産開発プロジェクトを展開しているデベロッパーと関連仲介企業の住宅「買い取り・買い替え」を支援する通知を発表した。通知では、「買い取り・買い替え」を実施するデベロッパーが、買い替え者の現在の住まいを買い取る際に、同市の企業・団体に対する住宅購入規制を受けない(注1)、とした。広東省城規院住宅政策研究センターの李宇嘉首席研究員は「深セン市政府が買い替えを支援するのは初めてで、これまでは仲介企業や業界団体が推進してきたことだ」とコメントした(「新京報」5月7日)。

なお、不動産研究機関の中指控股の観測によると、5月6日までに、中国全体で50以上の都市が住宅の「買い替え」を支援する姿勢を示しているという(注2)。

(注1)深セン市政府は2018年7月31日から、企業・団体による同市での住宅購入を一時停止していたが、2024年5月6日から、企業の住宅購入規制を緩和した。規制緩和の具体的な内容としては、設立年数が1年以上、同市で累計納税金額が100万元(約2,200万円、1元=約22円)以上、かつ従業員数が10人以上など条件を満たす企業の場合、従業員の住居需要に対応するため、塩田区、宝安区(新安街道、西郷街道を含まず)、龍岡区、龍華区、坪山区、光明区、大鵬新区で住宅を購入することができる、とした。

(注2)各地で発表された「買い替え」の措置は、主に「買い取り」「売却支援」「補助金」の3つの実施方法があるといわれている(「中国証券報・中証網」5月8日)。(1)「買い取り」は、主にデベロッパーまたは国有資本が買い替え者の現在の住まいを買い取り、その購入代金を指定された新築物件の購入に充てる。この方法が2024年からの主流となる。(2)「売却支援」は、本文の第2段落で紹介した深セン市の取り組み。(3)「補助金」は、地方政府が現在の住まいを売却して新築物件を購入した住民に対して一定の補助金を与える。

(汪涵芷)

(中国)

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