賴清徳総統が就任、中国には対話と台湾人民の選択を尊重するよう呼びかけ

(台湾、中国)

調査部中国北アジア課

2024年05月22日

台湾では5月20日に総統就任式が行われ、与党である民主進歩党(民進党)の賴清徳氏が第16代総統に、蕭美琴氏が副総統に就任した。就任式典には、国交のあるアフリカのエスワティニ王国やマーシャル諸島共和国のほか、米国、日本、シンガポール、オーストラリア、カナダなど世界各国から来賓200人が参加した。また同日、卓栄泰行政院長をトップとする新内閣も発足した(注1)。「民主、平和、繁栄の新台湾を築く」と題して行われた賴総統の総統就任演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのポイントは次のとおり。

1.両岸関係

国際間では既に、台湾海峡の平和と安定が世界の安全と繁栄にとって不可欠という高度なコンセンサスがある。新政権は「四つの堅持」(注2)に基づき、へつらわず、高ぶらず、現状維持に取り組む。私は中国に対し、台湾への言論での威嚇や武力による挑発をやめるよう求める。また、台湾とともに世界的な責任を負い、台湾海峡および地域の平和と安定を維持し、世界を戦争の恐怖から解放されるように尽力することを求める。中国が中華民国の存在とその事実を直視し、台湾人民の選択を尊重し、誠意を示すことを望む。民主選挙で選ばれた台湾の合法的な政府は対等、尊厳の原則の下で、対立を対話にかえて、封じ込めは交流と協力にとって代わることができる。まずは対等なかたちで相互の観光往来と台湾への留学を再開することから始め、ともに平和と共栄を追求することができる。

中国は台湾に対する武力侵攻の可能性をいまだに放棄していないため、中国の主張を全面的に受け入れ主権を放棄したとしても、中国の台湾併合の企図は消えるわけではないと、台湾人民は理解すべきである。

2.産業政策

産業界と連携して、次の3つの方向について、台湾の発展を推進する。(1)スマート化とサステナブル。産業の人工知能(AI)化を促進するほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)とネットゼロの2つを軸に中小企業のアップグレード・モデルチェンジを後押しする。(2)航空宇宙産業への参入と海洋探索の強化。ドローン産業のサプライチェーンにおいて、台湾をアジアの中心に位置づけるとともに、次世代の中低軌道衛星(MEO/LEO)の開発に力を入れる。海洋科学技術の研究に投資して海洋産業の発展を推進する。(3)地域経済統合の推進とグローバルサプライチェーンの維持・強化。既に参加を申請しているCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)のほか、積極的に地域経済統合への参加を目指す。半導体、AI(人工知能)、軍事産業、セキュリティー、次世代通信といった5大信頼産業を育成する。また、海外に進出する台湾企業の台湾への回帰投資を歓迎し、台湾域内企業の投資拡大などを奨励する。

電力供給について、第二次エネルギー転換を推進し、多様なエネルギーとスマートグリッドを発展させ、電力システムの強靱性を強化する。

3.内政

子ども手当の増額や高校の学費無償化、介護サービスの充実、非住居不動産への税率引き上げ、最低賃金の引き上げなどを掲げた政策パッケージである国家希望工程(2024年1月15日記事添付資料参照)を推進し、社会投資を拡大する。

写真 就任式典参加者に手を振る賴清徳総統(前列中央)、蕭美琴副総統(その右)、蔡英文前総統(左)(日本台湾交流協会台北事務所提供)

就任式典参加者に手を振る賴清徳総統(前列中央)、蕭美琴副総統(その右)、蔡英文前総統(左)(日本台湾交流協会台北事務所提供)

(注1)新内閣の主要な閣僚は行政院ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから確認できる。

(注2)自由で民主的な憲政体制を堅持、台湾と中国が互いに隷属していないことを堅持、主権の侵犯と併呑は許さないことを堅持、台湾の前途は全ての台湾人民の意思に従うことを堅持の4つを指す。

(江田真由美)

(台湾、中国)

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