米USTR、中国の海事・物流・造船分野に対する301条調査を開始

(米国、中国)

ニューヨーク発

2024年04月18日

米国通商代表部(USTR)は4月17日、中国の海事・物流・造船分野での行為・政策・慣行に対して、1974年通商法301条に基づく調査を開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ホワイトハウスも同日、USTRが調査を開始すると発表した(2024年4月18日記事参照)。

通商法301条は、外国の通商慣行が貿易協定に違反している場合や、不合理・差別的で米国の商業に負担または制限を与えている場合に、大統領の指示に従ってUSTRに追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認めている。措置発動に先立って、USTRは事実確認の調査を行い、調査報告書を作成する。調査の結果、米国の商業に負担または制限を与えていると判断される場合に、措置を発動する。調査は同法302条に基づき、企業などからの要請を受けて始めるか、USTRが自主的に始めることもできる。USTRは3月12日、全米鉄鋼労働組合(USW)など5つの労組から請願書を受理していた(2024年3月13日記事参照)。USTRは、請願書を受理した日から45日以内に調査を行うか否かを決定する必要があった。

今回の調査開始に伴い、USTRは主に次の点について、パブリックコメントを募集する。

  • 海事・物流・造船分野を支配しようとする中国の行為、政策、慣行。またそれが不合理または差別的であるか。
  • 川上から川下までのサプライチェーンや海運サービスを含む、世界の海事・物流・造船分野を支配しようとする中国の取り組み。
  • 海事・物流・造船分野における中国のその他の行為、政策、慣行に関する次の情報。国営企業および民間企業内の政治的指導・指示・統制、国有企業または国営企業の活動、市場アクセスおよび投資の制限、不透明な規制上の優遇措置および差別、賃金を抑圧する労働慣行、国家の産業支援(政府指導基金を含む)、強制的な技術移転(国家が支援する知的財産のサイバー活動による窃盗を含む)。
  • 中国の行為、政策、慣行が米国の商業に負担や制限を与えているかどうか。与えている場合には、その負担や制限の性質と程度。このコメントには、あらゆる部門・産業に対する負担または制限の経済的評価に加え、調査対象となっている行為などに関連する米国内の労働に対する負担または制限の評価を含められる。
  • (対抗措置を行うと判断した場合に)通商法304条に基づき決定される措置の内容。

USTRは、調査に関する公聴会を5月29日に首都ワシントンで実施する。公聴会は、必要に応じて5月31日まで延長される。パブリックコメントの提出および公聴会での証言の希望は、5月22日までに提出する必要がある。いずれも、USTRのポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから提出可能となっている。

USTRは通商法303条に基づき、中国に対し協議を要請した。同法304条に基づいて、本調査で問題視している点がWTOや自由貿易協定(FTA)などの通商協定に該当する場合には、紛争解決手続き終了時点から30日以内または調査開始から18カ月以内のいずれか早い方、WTOなどに該当せず米国による一方的措置を取る場合には調査開始から12カ月以内に、措置の原因となる行為などの存否、および取るべき対抗措置の内容を決定する。対抗措置を取る場合は、同法305条に基づき、原則として決定後30日以内に実施する(注)。

(注)措置の実施は180日の延期が可能となっている。通商法301条に基づく調査の仕組みについては、日本の経済産業省の不公正貿易白書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2019年5月15日付地域・分析レポートを参照。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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