デジタルウォレット、第4四半期から開始

(タイ)

バンコク発

2024年04月24日

タイ政府は4月10日、消費刺激策であるデジタルウォレット政策の詳細を公表した。当該政策は当初、2024年5月に実施される予定だったが、2024年第4四半期に延期されることとなった。また、当初案では特別立法による借り入れを検討していたが、次年度予算からの調達や政府系金融機関からの借り入れなどで対応することになった。

対象は、年収84万バーツ(約352万8,000円、1バーツ=約4.2円)未満かつ、銀行預金が50万バーツを超えない16歳以上のタイ国民だ。デジタル経済社会省(MDES)とデジタル政府開発庁(DGA)が開発するアプリを通じて、1人当たり1万バーツのデジタルマネーが支給される。第3四半期には個人と店舗のアプリへの登録が開始し、第4四半期にデジタルマネーの支給が開始する予定だ。

デジタルマネーを支給された者は、それぞれが居住する郡(Ampuhr:タイの行政単位)の中の特定の店舗でデジタルマネーを使用することができる。他方、たばこ、アルコール飲料、燃料、サービス、オンラインの販売商品などの購入に利用することはできない。

店舗側は、デジタルマネーとして得た収入を、他店舗で利用するか、現金に交換できる。ただし、現金への交換にあたっては、付加価値税(VAT)、個人所得税、もしくは法人税いずれかの登録をしていなければならない。また、個人(消費者)が購入した直後に現金に交換することはできず、2回目の消費に使用された後から現金に交換することができる。例えば、デジタルマネーが、個人からA店舗、A店舗からB店舗に流れた場合に、B店舗の段階で初めて現金化することができる。

公表後の記者会見で、登録対象となる店舗(デジタルマネーで購入可能)の詳細について聞かれ、チュンラパン・アモーンウィワット財務副大臣は「詳細はまだ完全に固まっていないが、現段階では、小規模店舗のみ登録対象になる」と回答した。また、パオプーム・ロジャナサクン財務相秘書官は「独立型店舗、ガソリンスタンド内の店舗、コンビニエンスストアを含む小売店は登録対象となるが、百貨店、大型小売店、卸売店、スーパーマーケットは登録できない」と述べた。

本スキームには約5,000億バーツが必要となるが、そのうち1,527億バーツを2025年度予算から調達し、1,723億バーツを農業・農協銀行(BAAC)から借り入れ、1,750億バーツを2024年度予算で賄う。タイ政府は当該政策がGDPを1.2~1.6%押し上げると見込んでいる。

(ピンラウィー・シリサップ、藤田豊)

(タイ)

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