ニューヨークオートショー、電動化の移行期に各社が幅広い車種をアピール

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月18日

米国のニューヨーク(NY)国際オートショー(NYIAS)が3月29日~4月7日、ジャビッツセンターで開催された。メイン会場の3階展示フロアでは17ブランド(注1)が出展。ここ数年来と同様に、バッテリー式電気自動車(BEV)に注目が集まったものの、各ブランドではガソリン車(ICE)に加え、各種電動車(注2)を含む幅広い車種で新たなモデルが出そろってきた印象を受けた。また、前年同様、1階フロアにはBEVの試乗コーナーが設置され、新興EVメーカーのルシード・モータースのBEV高級車「ルシードエア」やレクサス「RZ」などに長蛇の列ができた。

写真 メイン会場入り口(ジェトロ撮影)

メイン会場入り口(ジェトロ撮影)

一般公開に先立って行われた記者発表では、韓国勢の勢いが目立った。現代自動車はICEとハイブリッド車(HEV)の小型のスポーツ用多目的車(SUV)「ツーソン」、起亜は2024年のワールド・カー・オブ・ザ・イヤーと、ワールド・エレクトリック・ビークルを受賞したBEV「EV9」などをアピールしつつ、動力別には全方位で注力モデルを展示。日系メーカーでは、日産が最新のICEのSUV「キックス」、ホンダが2024年発売のBEV「プロローグ」を中心に出展した。そのほかの展示フロアでは、トヨタがICEからBEVまで各種動力の車両を幅広く展示し、その中でもHEVの乗用車2025年「カムリ」(プロトタイプ)を展示スペースの正面に据えてアピール。米系メーカーでは、ゼネラルモーターズ(GM)がICEのほか、前年同様にBEVのSUV「エクイノックス」、ピックアップトラック「シルバラード」、SUV「ブレイザー」を出展。同社関係者によると、市場がBEVへの移行期にある中で、新たなPHEV導入が必要との見方から、2019年に生産を中止したPHEV「VOLT」の技術見直しを検討しているという。フォードは最前面にBEV「F150ライトニング」のオフロード用モデルでBEVの力強さをアピールするとともに、PHEVの小型SUV「エスケープ」を展示。多くのブランドがICE、電動車双方に注力していることを印象づけた。

写真 ルシード・モータース「ルシードエア」(ジェトロ撮影)

ルシード・モータース「ルシードエア」(ジェトロ撮影)

写真 ホンダ「プロローグ」(ジェトロ撮影)

ホンダ「プロローグ」(ジェトロ撮影)

写真 起亜「EV9」(ジェトロ撮影)

起亜「EV9」(ジェトロ撮影)

パネル討論で「自動車の未来は電気。だが、普及のスピードには調整必要」

会場では専門家によるEV普及の見通しに関するパネルディスカッションも開催された。主要自動車メーカーを代表する米国自動車イノベーション協会のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「私は政府に対し、規制のペースを遅らせる必要があると言ってきた」と述べ、3月20日に環境保護庁(EPA)が発表した温室効果ガス(GHG)排出規制を緩和する方向で見直した点を評価。今後に関しては「アーリーアダプターには既に(BEVが)行きわたった感があり、家庭にある2台目以降にEVを普及させるには、顧客と協力し続けなければいけない。現在は産業革命同様、テクノロジー革命の始まりだ。困難は付きまとうものの、電気(自動車)が未来であることに疑いの余地はない」と述べた。全米自動車ディーラー協会(NADA)のマイク・スタントン会長兼CEOは「EVの早期導入には成功したが、今後は大衆市場に参入する必要がある。特に恵まれない地域社会や低所得者層に対して手頃な価格で提供するための道のりは長い。ディーラーはEV普及に全力で取り組んでいるが、(EPAの)目標値は依然として高過ぎる」と述べ、販売への影響を危惧した。BEVとPHEVの普及見通しに関し、ボゼーラ氏は2029年時点で全車の40%、市場調査会社JDパワーのエリザベス・クレア電気自動車担当副社長は30%と発言した。

(注1)一般チケットで鑑賞できるブランドに限る。

(注2)ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、バッテリー式電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(大原典子)

(米国)

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