米カリフォルニア州で新たなAI規制法が州上院司法委員会を通過

(米国)

サンフランシスコ発

2024年04月12日

米国カリフォルニア州で4月4日、「最先端AIシステムのための安全で安心な技術革新法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(SB1047)の法案が上院司法委員会を通過した。この法案はスコット・ウェイナー州上院議員(民主党)が2月7日に提出し、3月20日に修正が行われていた。

同法案は、大規模な人工知能(AI)モデルの開発に先立ち、企業に対して事務的、技術的、物理的なサイバーセキュリティー保護を義務付けるとともに、この技術によって利用者が重大な被害を被った際には企業に法的責任があるとするもの。合理的な理由があれば、司法長官による訴追も認めている。

この法案が適応されるのは、2024年時点で10の26乗フロップス(注)以上の計算能力で学習されたAIモデルとなる。施行された際は、同州技術省は国立研究所や大学、関連する専門家団体や民間の利害関係者などに委託し、「カルコンピュート」と呼ばれるクラウドコンピューティング環境を構築し、大規模AIモデルの安心かつ安全な開発に関する研究と公平なイノベーションの育成を行うとしている。

生成AIに対する規制は2023年に、連邦レベルではジョー・バイデン大統領が大統領令で(2023年11月1日記事参照)、州レベルではギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事が州知事令で(2023年9月15日記事参照)、一定の安全基準を確立してきた。連邦議会に動きがない場合、カリフォルニア州議会で成立した法令は、この業界の先例となる可能性があるとみられている。

その一方で、SB1047法案に対しては、テクノロジー業界団体のチャンバー・オブ・プログレスやカリフォルニア州商工会議所などが反対を表明している。同法案の対象が過度に広範で、企業に対する負担が大きく、イノベーションを抑圧することになり、小さなスタートアップに不利な影響を強く与える可能性があるとしている。

(注)フロップス(FLOPS, Floating-point Operations Per Second)は、コンピュータの処理能力の単位で、1秒間に浮動小数点演算を何回できるかという能力を表している。

(松井美樹)

(米国)

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