鉄鋼など544品目の関税率を最高50%まで引き上げ

(メキシコ)

メキシコ発

2024年04月25日

メキシコ政府は4月22日、連邦官報で政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、鉄鋼など544品目の一般(MFN)関税率を4月23日から2026年4月22日までの期限で一時的に引き上げた。鉄鋼以外では、アルミニウム、繊維、衣料品、履物、木材、プラスチック、化学製品、紙やボール紙、セラミック製品、ガラス、電子機器、輸送機器、楽器などが対象で、関税率は品目に応じて5~50%となる。2023年8月15日付の政令では、392品目の一般関税率を一時的に引き上げたが(2023年8月18日記事参照)、今回の引き上げでは、前回と比べて新たな品目が加わり、関税率引き上げ期間も約9カ月延長となった。最も対象品目が多いのは、鉄鋼(HS72類)・同製品(HS73類)で、合計226品目の関税率の平均値は25~35%で最大50%(注1)まで引き上げた。

全国工業会議所連合会(CONCAMIN)のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、今回の措置は、非石油製品の対中国の貿易赤字が2023年に1,040億ドルに達し、脆弱(ぜいじゃく)な状況に直面している国内産業セクターに公正な市場条件を提供することを目的としている。また、CONCAMINは経済省と協力し、中国製品が第三国経由で流入するのを防ぐ目的で、ベトナムから輸入される品目に対する監視制度を導入する。輸入品の原産地を偽る行為を重大な違法行為として制度化するために連邦議員との連携も行うなど、合法かつ公正な貿易を促進するための追加措置に取り組む予定としている。

繊維、衣料品、履物部門については、安価な衣料品や模倣品の問題に対処し、強制労働で作られた製品の輸入を防ぐために、米国・カナダ・メキシコ間の情報交換を促進するとした。

FTAやPROSEC、レグラ・オクターバの利用推奨

今回の引き上げは一般関税率を対象とするため、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)など、メキシコと自由貿易協定(FTA)を締結している協定活用の輸入には影響が出ない。また、産業分野別生産促進プログラム(PROSEC、注2)やレグラ・オクターバ(注3)に基づく優遇関税率も適用可能だ。現状でFTA非締結国である中国や韓国から輸入している場合は、FTA締結国産品の輸入に切り替えるか、PROSECを有する企業については、PROSEC税率の適用、あるいはレグラ・オクターバを申請し、税率を下げる必要がある。

(注1)一般関税率を50%に引き上げたのは、HSコード7213.91.03と7213.99.99の2品目のみ。

(注2)メキシコ政府が国内生産を促進する24の業種で生産活動を行う企業が登録を行い、特定の部品・原材料、機械設備を優遇関税で輸入できるプログラム。

(注3)PROSECの優遇関税の対象になっていない品目について、国内生産がない、あるいは不十分などを理由に、PROSEC登録企業が経済省から特別輸入許可を個別に取得し、承認された数量枠内に限り、原則無関税で輸入を認める制度。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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