米大統領選の予備選、激戦州ペンシルベニアでバイデン氏、トランプ氏が順当に勝利も抗議票もみられる

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月25日

米国ペンシルベニア州で4月24日、11月の大統領選挙に向けた民主党と共和党の予備選挙が行われた。民主党ではジョー・バイデン大統領、共和党ではドナルド・トランプ前大統領がそれぞれ順当に勝利を確実にした。両者は党の指名獲得に必要な代議員数の過半数を既に獲得している(2024年3月14日記事参照)。同州は大統領選挙本選の結果を左右する激戦州(スイングステートPDFファイル(642KB))の1つとして注目されている。

CNNによると、バイデン氏が得票率88.2%、トランプ氏が82.8%となっている(開票率96%時点、注1)。しかし、民主党側ではディーン・フィリップス下院議員(ミネソタ州)に6.5%、その他の候補に5.3%と計10%以上の票が、共和党側ではニッキー・ヘイリー元国連大使に16.4%の票が集まった。フィリップス氏、ヘイリー氏ともに既に選挙戦から撤退しており、これらの票はバイデン氏、トランプ氏への抗議票だとみられている(議会専門誌「ザ・ヒル」4月23日)。バイデン氏に対しては、パレスチナ自治区ガザ地区で攻撃を続けるイスラエルへの対応への批判が一部の層で根強く、トランプ氏は熱狂的な支持者を抱える一方で、複数の刑事裁判を抱える点などを嫌う層も常に一定数いる。また、トランプ氏にとっては、ヘイリー氏の票を取り込めるかが本選での争点の1つとされており(2024年3月7日記事参照)、本選に向けてヘイリー氏の支持票の行方が引き続き注目される。

なお、ペンシルベニア州は激戦州の中でも選挙人数が19人と最も多く、大統領選挙本選の結果を占う上で最注目州の1つとなっている。同州は、日本製鉄が買収を提案しているUSスチールの本社が所在していることでも知られている(2024年4月15日記事参照)。2016年はトランプ前大統領が、2020年はバイデン大統領が勝利したが、それぞれ得票率の差は0.7ポイント、1.2ポイントとわずかだった(CNNに基づく)。選挙情報サイトのリアルクリアポリティクスの同州での各種世論調査の平均値(3月10日~4月16日)では、バイデン氏支持が46.7%、トランプ氏が46.3%と拮抗(きっこう)している。

ペンシルベニア州では、連邦上院選挙も注目されている。選挙予測サイト270トゥウィンによると、11月の連邦上院選挙後では、共和党が50議席、民主党が47議席を占めると見込まれ、残り3州(アリゾナ、モンタナ、オハイオ)は接戦の予測だ(注2)。従って、民主党は優勢州に加え、接戦州でも全て勝利しなければ、上院での多数政党になれないと予測されている(注3)。現時点でペンシルベニア州は民主党優勢とされるが、その中でも最も確度の低い「やや優勢(lean)」となっており、民主党としては負けられない選挙区となる。現職のボブ・ケーシー議員(民主党)に対して、ブッシュ政権下で次席大統領補佐官(国際経済問題担当兼国家安全保障問題担当)などを務めたデビット・マコーミック氏(共和党)が挑む構図になっているが、「ザ・ヒル」(4月22日)によると、ケーシー議員にとってこれまでの選挙戦で最も厳しい戦いになる見込みだという。バイデン政権は2022年の中間選挙でねじれ議会となって以降、大型の法案を成立させることができておらず、大統領選挙とともに議会選挙の行方にも注目する必要がある(2024年3月25日記事参照)。

ジェトロの特集ページ「2024年米国大統領選挙に向けての動き」では、大統領選挙に関する最新動向を随時紹介している。

(注1)得票率は全て開票率96%時点のCNNに基づく。

(注2)非改選の議席(民主党28議席、共和党38議席)も含む。

(注3)上院では、法案採決で賛否同数の場合、副大統領が上院議長として最終的な議決権を有する。

(赤平大寿)

(米国)

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