習国家主席が台湾の馬氏(前総統)と会談、両岸の同一性を強調

(中国、台湾)

北京発

2024年04月16日

中国の習近平国家主席は4月10日、北京市で台湾の馬英九氏(注1)と会談した。

習国家主席は、台湾との間では解決できないわだかまりや、協議できない問題は存在せず、いかなる勢力もわれわれを分け隔てることはできないとした。また、制度の違いは両岸(注2)が一つの国家、一つの民族であるという客観的事実を変えることはできないとした。その上で、両岸は共同の血統、共同の文化、共同の歴史を持ち、民族に対して共同の責任を持ち未来へ共同の期待を有しているとした。

あわせて習国家主席は、中華民族の(1)共同の故郷を守ること、(2)長く続く幸福をともにつくり上げること、(3)共同体意識をしっかりと確立すること、(4)偉大な復興を実現することの4点を提唱した。

中国側の発表によれば、馬氏は「92年コンセンサス」(注3)を堅持し、「台湾独立」に反対することこそが、両岸関係の平和的発展へ向けた、共同の政治的基礎だとした。

馬氏は4月1~11日に広東省、陝西省、北京市などを訪問した。今回の訪問には台湾の若者の一団も同行している。

中国社会科学院台湾研究所の劉匡宇副所長は、「今回の会談は今後一定期間の両岸関係にとって非常に重要な政治的意義、もしくは方向性を示す意義を持っている」とし、両者が直接会談をすることは、外部勢力による台湾問題への介入への反撃になるとした(「直新聞」4月10日)。

アモイ大学両岸関係平和発展共同イノベーションセンターの劉国深主任は、台湾の教育には台湾独立に関する内容が含まれており、若者の政治認識に問題が生じているとの懸念を示した上で、今回、馬氏が若者を同行し交流を促進した点を評価した(「直新聞」4月11日)。

また、同行した若者たちは両岸関係の改善に期待を寄せており、これは台湾社会の平和、発展、交流、協力を望むという主流な民意を表したものだとの評価もある(「澎湃新聞」4月12日)。

中国の国務院台湾弁公室は4月10日の記者会見で、現在、両岸の青年間交流は民進党により妨害を受けているとし、馬氏は交流推進に重要な貢献をしていると評価した。

(注1)中国は台湾総統について、通常「台湾地区の指導者」と表現しており、今回の馬英九氏の訪問について、公式には肩書に触れられていない。

(注2)台湾海峡をはさんだ「両岸」にある、両地の関係を表す。

(注3)1992年に中国と台湾の代表機関が、「一つの中国」原則について形成したとされるコンセンサス。中国側の説明によれば、それぞれが自己の認識を口頭で表明し、中国側の代表機関は「(両者が)『一つの中国』原則を堅持し、国家統一実現へ努力する。ただし、双方の事務的協議では『一つの中国』の政治的含意には言及しない」との内容を示したとされる。

(河野円洋)

(中国、台湾)

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