首相、重要鉱物プロジェクトに総額約6億豪ドル融資を発表

(オーストラリア)

シドニー発

2024年04月30日

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は4月17日、国内の重要鉱物のプロジェクト2件に対して、総額5億8,500万オーストラリア・ドル(約579億1,500万円、豪ドル、1豪ドル=約99円)の政府融資を行うと発表した。

1つは、クイーンズランド州のグラッドストーンにある、オーストラリア金属企業のアルファHPAによる国内初の高純度アルミナ精錬工場で、主に政府の輸出金融公社(EFA)を通じ4億豪ドルを融資する。財源は、連邦政府が重要鉱物プロジェクトを支援するために設置した融資制度「クリティカル・ミネラル・ファシリティ」(注1)から拠出される。連邦政府傘下の融資機関の北オーストラリア・インフラ・ファシリティ(NAIF)(注2)も融資に加わる。高純度アルミナは、LED照明や半導体、リチウムイオン電池、ハイテク製品などに使用される。アルファHPAは、自社の特許技術で高純度のアルミナを精錬する。

もう1つは、オーストラリア鉱物探査企業のルナスコーリソーシーズが南オーストラリア州で手掛けるシビア・グラファイト・プロジェクトだ。今回、プロジェクトの第1段階に対して、条件付きで1億8,500万豪ドルの融資が承認された。同社は、電気自動車や再生可能エネルギーに不可欠なリチウムイオン電池に用いられる精製グラファイトを国内で生産する。

連邦政府は、2023年7月に、2030年までの重要鉱物戦略を発表し、自国で生産した重要鉱物を国内で加工・精製し、自国で付加価値を高め利益を拡大していくことを目指している(2023年7月10日記事参照)。今回のプロジェクトで生産される高純度アルミナ、グラファイトはそれぞれ、同戦略のオーストラリア重要鉱物リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載された鉱物だ。

政府の発表を受けて「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(AFR)」紙(電子版2024年4月16日)は、アルバニージー首相が4月11日に策定を発表した「フューチャー・メード・イン・オーストラリア法」にとって(2024年4月22日記事参照)、重要鉱物の中国への依存度の引き下げにつながるという安全保障上の観点で、政府の「重要鉱物戦略2023-2030」が重要な要素となる、との見方を示している。

(注1)クリティカル・ミネラル・ファシリティ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、政府が2021年に立ち上げた金融支援制度で、連邦政府の重要鉱物戦略に沿ったプロジェクトに対しEFAが融資を提供する制度。資金規模は40億豪ドル。

(注2)北オーストラリア・インフラ・ファシリティ(NAIF)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、連邦政府の融資機関で、オーストラリア北部やインド洋沿岸地域のインフラ整備に関するプロジェクトに対して、市場金利を下回る低金利での融資を行う。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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