ルアンプラバンでASEAN経済大臣非公式会合、改正ASEAN中国FTA交渉の進捗など確認

(ASEAN、タイ、ラオス、ベトナム)

バンコク発

2024年04月04日

タイのナピントーン・シーサッパーン商務副大臣は3月9日、ラオスのルアンプラバンで開催された第30回ASEAN経済大臣非公式会合(AEMリトリート)に出席した。タイ商務省貿易交渉局(DTN)が3月10日に明らかにした外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。会合の概要は次のとおり。

(1)ラオスがASEAN議長国を務める2024年の主な経済優先事項に関して合意がなされた。具体的には、地域内の連結性、グローバル・サプライチェーンへのASEANの参画、そして貿易ブロックとしての競争力を強化し、民間セクターに付加価値を与えるため、ASEANのデジタル経済とグリーン経済の基盤の構築に焦点を当てる。自由貿易協定(FTA)に関しては、ASEAN中国FTA(ACFTA)の改正に向けた交渉の加速と妥結、改正ASEANオーストラリア・ニュージーランドFTA(AANZFTA)の発効を優先事項とする。

(2)さまざまな課題がある中、世界経済におけるASEANの役割について、あらためて議論が行われた。2023年のASEAN経済は、観光産業が回復したことで4.7%成長を達成し、これは世界経済の平均である3.1%を上回っている。特に重要な分野である、1.貿易・輸送・物流円滑化の促進、2.新たな市場および原材料調達先の開拓、3.新型コロナ禍後の新時代の経済に対応するための継続的な人材育成、4.グリーンおよびデジタル経済の恩恵の探求、という4分野での行動をASEAN加盟国に呼びかけた。

(3)ASEANサービス円滑化枠組み(ASFF)を採択。ASFFは、2023年のASEAN経済大臣会合で合意されたもので、サービス貿易の自由化、地域のサービス産業の統合に向けた従前からの協力を強化する狙いがある。サービス業者がビジネスをしやすい環境をつくるためのサービス貿易政策や規制関連手続きの改善を支援するため、AEMでは今後、ASFFに基づいた実行・作業計画の議論を行う。

(4)折り返し地点に至った改正ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の交渉の進捗を確認。さらなる関税削減、循環型品目に対する市場開放、代替的紛争解決制度などの主要論点については2024年中に結論を出す必要がある。タイは、生鮮・冷蔵の鶏肉、コメ、果物などの農産品をはじめとする1,266品目について、さらなる関税削減を推進する。

(5)改正ACFTA(ACFTA 3.0)の交渉の進捗を確認。中国は15年連続でASEANの最大の貿易相手国となっており、タイにとっても12年連続で最大の貿易相手国となっている。ASEAN側の交渉団は2024年内に交渉を妥結するとの方針を示した。新たに追加されるデジタル貿易章を念頭に、デジタル経済の分野でも中国と協力を強化する。中国は世界最大の電子商取引市場であり、高度な技術とイノベーションを有している。

(6)持続可能な開発のためのASEANアジェンダの実施の進捗を確認。近年では、ASEANカーボンニュートラル戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)ASEAN循環型経済枠組みPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)ASEAN海洋経済枠組み外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが成立するなど、重要な進展があった。タイ政府は、地球温暖化問題、特に健康と環境に悪影響を及ぼすPM2.5、大気汚染に取り組むため、真に協力する必要性があることを強調した。また、タイはASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)交渉委員会の議長国として、2年以内のDEFA締結に向けた支援を表明した。タイとしては、DEFAが関連貿易やサービスの促進、ASEANと域外国からの投資誘致に追い風となることを期待している。

ナピントーン商務副大臣は、ミャンマー投資・対外経済関係省のカン・ゾー博士との2国間会談において、気候変動問題、特にPM2.5汚染問題への対処法について議論を交わした。タイは、焼き畑農業に起因するPM2.5問題の解決策をミャンマーに提案した。

また、ベトナム商工省のグエン・シン・ニャット・タン副大臣との会談では、タイはベトナムに対し、陸路でベトナムを経由して中国に輸出されるタイ産果物の通関手続きの円滑化を要請した。中国への果物輸出では、タイのムクダハンやナコンパノム国境から、ラオスを経由し、ベトナムのヒューギやモンカイ国境を通って、中国の友誼関と東興国境に輸送されている。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(ASEAN、タイ、ラオス、ベトナム)

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