米ボルティモアの港湾事故に伴い、石炭輸出が減少見込み

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月10日

米国エネルギー情報局(EIA)は4月9日、短期エネルギー見通しを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、この中でメリーランド州ボルティモア港での事故(2024年3月28日記事参照)に伴い、4月と5月の石炭輸出見通しを下方修正した。

この事故に関しては、国家経済会議(NEC)が各種業界に対して行ったヒアリングで、サプライチェーンへの影響は限定的と報告されている。加えて、ボルティモア港でも5月末までに恒久的な水路を確保するという見通しの下で、迂回輸送を含めてサプライチェーンへの影響を最小化する取り組みが進められているが(2024年4月9日記事参照)、一部に実際の影響が生じる可能性が示されたかたちだ。

EIAは長期的に大きな影響が出るとは考えていないとしつつも、EIAが3月に発表した石炭輸出見通しと比較すると、4月は30%程度〔300万ショートトン(注1)〕減少、5月は20%程度(200万ショートトン)減少、2024年通年は6%程度の減少になると、それぞれ見込んでいる。エネルギー情報管理官のジョー・デカロリス氏は「米国の石炭輸出は夏の終わりか初秋に向けて回復すると予想しているが、港湾再開のスケジュールに基づくと、かなりの不確実性がある」と述べており(ブルームバーグ4月10日)、引き続き留意が必要だ。

なお、2023年のデータでは、ボルティモア港から輸出される石炭は、発電や工業用の熱生成に使用される一般炭が約1,900万ショートトン、鉄鋼生産に使用される冶金(やきん)用炭が約900万ショートトンとなっている。これらの直近5年間の輸出先は、前者は主としてインドやオランダ、後者は主として日本(注2)、中国、ブラジルなどだ。

(注1)1ショートトンは907.18キログラムに相当。

(注2)日本の資源エネルギー庁の「令和4年度エネルギーに関する年次報告」によると、2021年度の日本の全世界からの原料炭輸入量は6,338万トン、うち米国からの輸入量は9.1%となっている。

(加藤翔一)

(米国)

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