スタートアップの資金調達数が増加、投資傾向に変化も

(フィリピン)

マニラ発

2024年04月15日

コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と、フィリピンを拠点とするベンチャーキャピタル(VC)のフォックスモント・キャピタル・パートナーズは3月20日、「フィリピン・ベンチャーキャピタル・レポート2024外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。

報告書によれば、2023年のフィリピンにおけるスタートアップの資金調達件数は96件で、2022年の83件から13件増加し、過去最多を記録した。分野別で最も件数が多かったのはフィンテックで22件(全体の22.9%)、次いで企業向けSaaS(注)が14件(同14.6%)、Eコマースが13件(同13.5%)だった。資金調達件数全体に占めるフィンテック分野の割合は2021年には65.8%だったが、2023年は低下しており、企業向けSaaS、Eコマースなどの他分野が台頭してきている。2023年6月に、米国調査会社のスタートアップ・ゲノムと、スタートアップを支援するグローバル・アントレプレナーシップ・ネットワーク(GEN)が発表した「THE GLOBAL STARTUP ECOSYSTEM REPORT 2023」でも、特にマニラにおいて、フィンテックのほか、Eコマース・ゲーム関係が強みを有する産業として挙げられていた(2023年6月29日記事参照)。加えて、フィリピンのスタートアップによる資金調達額は9億6,000万ドルと前年から13.5%減少したものの、東南アジア地域全体のスタートアップによる資金調達額に占めるフィリピンのシェアは7%から13%へ9割増と拡大したと報告した。

フィリピンのゴビコア・ファンドが3月13日に発表した「フィリピン・スタートアップ・エコシステム・レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によれば、スタートアップに対する投資に変化がみられ、創業段階から資金を投入するなど投資先の持続可能な成長を重視する投資が増えているとした。同報告書によれば、2023年はプレシード、シード、プレシリーズAやシリーズAなど事業ステージが早期のスタートアップによる資金調達件数が増加したのに対し、事業を拡大していく段階にあるスタートアップの資金調達件数は前年比で7割減少した。

(注)ソフトウエア・アズ・ア・サービスの略。サービス提供会社であるベンダーが開発したソフトウエアを、ベンダーが有するサーバーからオンライン経由でユーザーにライセンス形式で使用することができるクラウドサービス。企業向けSaaSには、クラウド形式で提供される会計ソフトや勤怠管理システムなどがある。

(西岡絵里奈)

(フィリピン)

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