予想に反する底堅さ、中長期的な低迷を懸念、IMF経済見通し

(世界)

調査部国際経済課

2024年04月17日

IMFは4月16日、最新の「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。世界の経済成長率(実質GDP伸び率)について、2023年は3.2%とし、2024年、2025年ともに同率(3.2%)で、横ばいで推移すると予測した(添付資料表参照)。前回(2024年1月)見通し(2024年2月2日記事参照)から、2024年は0.1ポイントの上方修正、2025年の修正はなかった。世界のインフレ率は、2023年に6.8%、2024年に5.9%、2025年に4.5%と、2022年の8.7%をピークに低下する見通し。

主要国・地域別にみると、米国は2024年に2.7%と、前年(2.5%)からわずかに加速し、2025年には金融引き締めと労働市場の緩和の影響で1.9%に減速する(2024年4月17日記事参照)。ユーロ圏は2024年に0.8%、2025年に1.5%と、エネルギー価格高騰の緩和や、インフレ率の低下による家計消費の強さを原動力に、前年(0.4%)から回復する見通し。中国は、不動産セクターの低迷が響き、2024年は4.6%、2025年は4.1%と、前年(5.2%)から鈍化。インドは、2024年に6.8%、2025年に6.5%と、好調な内需と生産年齢人口の増加を背景に、堅調な成長を見込む。

IMFは世界経済について、新型コロナウイルス禍以降、サプライチェーンの混乱や、世界的な商品価格の高騰、各国の金融引き締めなどによる悲観的な見通しが示されていたが、結果的に景気後退を免れ、強靭(きょうじん)性を保ったと評した。ただし、今後2年間の経済成長率は、2000~2019年の平均(3.8%)を下回る予測だ。IMFのピエール・オリビエ・グランシャ主任エコノミストは「大半の経済指標は軟着陸を示している」とした一方で、「過去4年間の危機による経済の後遺症は当初より小さい予測だが、国・地域によって格差が生じている」と強調した。IMFの推計によると、米国経済は既に新型コロナ禍前のトレンドを上回る成長となっている半面、低所得発展途上国では新型コロナ禍や生活コストの上昇による危機からの脱却に苦戦し、依然として後遺症の影響が根強く残る。

また、中長期的な成長見通しは、地政学的な分断の進行や貿易制限措置などの急増によって損なわれているし、世界経済の弱体化リスクを指摘した。人口動向や技術進歩を保守的に仮定して予測すると、中期的な世界経済成長率は3%を下回る可能性もある。過去の平均成長へ戻すには、強力な政策支援と人工知能(AI)などの新興技術の活用の両方が不可欠との分析を示した。

IMFは世界経済見通しに対するリスクについて、現時点でほぼ均衡しているとした。下振れリスクとして、ウクライナ紛争や緊迫するイスラエル情勢などの地政学的緊張により、新たな商品価格の高騰や目標インフレ率の実現の遅れなどを挙げた。

(田中麻理)

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