2024年の世界経済成長率を0.2ポイント上方修正、IMF経済見通し

(世界、米国、中国、EU、イスラエル、ウクライナ)

調査部国際経済課

2024年02月02日

IMFは1月30日、最新の「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。世界の経済成長率(実質GDP伸び率)について、2023年の3.1%から2024年に3.1%、2025年には3.2%と、ほぼ横ばいで推移すると予測した(添付資料表参照)。前回(2023年10月)見通し(2023年10月12日記事参照)から、2024年は0.2ポイント上方修正した。

2000~2019年平均成長率3.8%と比べて、低調な成長ではあるものの、「世界経済の成長へのリスクは残るが、ソフトランディングの可能性が見えてきた」としている。上方修正の理由として、米国と主要な新興・発展途上国・地域における予想以上の経済の底堅さと中国における財政支援策の導入を挙げている。

世界のインフレ率は、2023年の6.8%から、2024年に5.8%、2025年に4.4%へと鈍化する見込みで、前回予測と比較して、2025年の予測は0.2ポイント下方修正された。

世界経済の下振れリスクとしては、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスとイスラエルの武力衝突、紅海での船舶への攻撃、ロシアによるウクライナ侵攻といった地政学的ショックがもたらした供給の混乱による一次産品価格の高騰に加えて、基調的なインフレなどを理由として金融引き締めが長期化することを挙げた。

地域別にみると、米国は予想より堅調な成長を遂げるとされており、2023年の成長実績が予想を上回ったことから、2024年については2023年10月見通しから0.6ポイント上方修正された。米国の成長率は、2023年の2.5%から2024年は2.1%、2025年は1.7%に減速すると予想されている。ユーロ圏では、ロシアによるウクライナ侵攻による影響が相対的に大きいことを受けて、2023年の成長率は0.5%と低くなったが、2024年は0.9%、2025年は1.7%へと回復すると予想されている。エネルギー価格の高騰が落ち着き、インフレ率が低下するのに伴い、実質所得の伸びが下支えされ、家計消費が持ち直して回復の原動力になるとみられる。中国の成長率は、2024年が4.6%、2025年が4.1%と予測されており、2024年については前回から0.4%ポイント上方改定されている。

IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は、各国の中央銀行が直面しているリスクについて、「インフレが需要主導で生じている米国は、早すぎる緩和に注意する必要がある。一方、エネルギー価格が上昇しているユーロ圏では、金融正常化に向けてかじを切ることも重要だ。でなければ、成長を妨げ、インフレ率が目標を下回るリスクがある」と警鐘を鳴らした。また、「多くの国が、公的債務残高と借り入れコストを増加させてパンデミックとエネルギー危機から脱した。公的債務と財政赤字を減少させることが未来のショックに対処する余地を与える」と財政再建の必要性を述べた。

(板谷幸歩)

(世界、米国、中国、EU、イスラエル、ウクライナ)

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