アフリカ航空業界の安全実績改善
(アフリカ)
調査部中東アフリカ課
2024年03月14日
国際航空運送協会(IATA)は2月28日、世界の航空に関する2023年度の年次安全報告書を発表し、アフリカ(注1)を含めて多くの地域で安全実績が改善したと指摘した。世界的に航空業界の安全性が継続して進歩しており、2023年はジェット旅客機の機体損失や死亡事故は発生せず、「過去最高」の結果だとした。
アフリカでは、100万便当たりの事故件数を表す全事故率が2022年の10.88から2023年は6.38に改善し、5年間の平均7.11を上回った。2020年以降、ジェット機の機体損失や死亡事故も発生していない。また、2023年は死亡者も出ておらず、特にターボプロップ機(注2)による死亡事故は2015年以降5度目のゼロだった。
IATAでは、航空業界が経済成長に大きな影響を与える中で、アフリカを最も大きな可能性を秘めている地域として、「フォーカス・アフリカ」と称したパートナーシップをアフリカ各国や航空関係者と結んでいる。フォーカス・アフリカのイニシアチブの下、アフリカでの航空安全を強化するために、共同航空安全改善プログラム(CASIP
、注3)を開始し、各国と連携して国際民間航空機関(ICAO)の安全基準の達成や、SARP
(注4)の実施拡大を図っている。
一方で、地域別の全事故率では、アフリカが最も高い。報告書では同地域の航空業界は地政学的な緊張による安全、運航、セキュリティー事象で混乱が続いていると報告している。SARPの最低実施基準の75%を満たしているのは、アフリカ54カ国のうち12カ国のみで、大幅な改善が必要としている。
IATAは、2035年までにアフリカの航空輸送旅客数は倍増し、2億6,000万人を超えると予測している(2023年4月13日記事参照)。また、2023年にはアフリカの航空会社の日本便の再開(2023年7月20日記事参照)や増便(2023年9月5日記事参照)も報じられている。
(注1)同報告書の統計では、アルジェリア、エジプト、リビア、モロッコ、スーダン、チュニジアは中東・北アフリカ地域に含まれる。
(注2)機体の先端、または両翼にプロペラを付けている航空機。
(注3)国際民間航空機関(ICAO)、アフリカ民間航空委員会(AFCAC)、米国連邦航空局(FAA)、ボーイング、南アフリカ航空協会(AASA)をパートナーとし、アフリカでの航空事故、重大事故の発生率削減のためのプログラム。
(注4)国籍や使用言語の異なるパイロットや航空管制官が連携するための共通理解と、航空業界の組織化のために作られた標準と推奨される実践方法。
(加藤皓人)
(アフリカ)
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