バイデン米政権、連邦政府機関のAI利用指針を発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月29日

米国行政管理予算局(OMB)は3月28日、連邦政府機関が人工知能(AI)を利用する際の指針を示した文書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)はジョー・バイデン大統領が2023年10月に発令した、AIの開発や利用に関する大統領令を受けたもの(2023年11月1日記事参照)。同大統領令では、連邦政府が責任をもって効果的にAIを利用するための指針を策定することなどを指示していた。文書では、次の指針を連邦政府機関に示している。

  1. リスク管理:空港の顔認証システムや、連邦政府系病院の診断システムなど、連邦政府機関が米国民の権利や安全に影響を与える可能性のあるAIを使用する場合、2024年12月1日までに、アルゴリズムによる差別を防ぐなどの具体的なセーフガード措置を講じることを義務付ける。措置を講じることができない場合には、当該AIシステムの使用を原則中止する。
  2. 透明性の向上:米国民の権利や安全に影響を与えるような使用事例を特定し、関連するリスクにどのように対処しているかなどを含む一覧表を年次で公表する。
  3. イノベーションの推進:異常気象、洪水、山火事、ハリケーンの正確な予測や被害の評価など気候変動・自然災害への対応、疾病のまん延予測やオピオイドの不正使用検知など公衆衛生の向上、航空交通渋滞や鉄道路線保守の効率改善など公共交通機関の安全性維持に向け、適切なセーフガード措置を講じた上で責任をもってAIを活用する。
  4. 人材拡充:責任をもってAIを開発・導入するために、AI人材の増員・スキルアップに取り組む。また、2024年夏までにAI専門人材を連邦政府機関全体で新たに100人雇用するとした同大統領令に基づき、2024年4月にキャリアフェアを開催する。
  5. ガバナンス強化:各連邦政府機関はAI利用の説明責任・リーダーシップ・監督を担保するために最高AI責任者(Chief AI Officer)を配置するほか、AI利用を調整・管理するために副長官などを議長とするAIガバナンス委員会を設置する。

カマラ・ハリス副大統領は同日に行われた記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「これらの米国内の施策が世界的な行動のモデルになることを目指している」と述べ、AIの開発や利用に向けた国際基準策定で米国がイニシアチブを取っていく考えを示した。なお、国連総会では3月21日、米国が主導するかたちでAIの開発や利用などに関する決議案が採択され、国連加盟国・地域に「安全で、安心、信頼できるAIシステム」に関する規制やガバナンスの手法・枠組みを策定することを促していた(2024年3月25日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国)

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