日本発スタートアップ、GHG排出削減に向けて地場との協業を加速

(ベトナム)

ハノイ発

2024年03月08日

ベトナム政府は2025年からカーボンクレジット取引所のパイロット運用を開始するとしており、クレジット取引を活用したビジネスに注目が集まっている。しかし、本分野で知見を有するベトナム地場企業は少なく、地場大手も新たな技術やビジネスモデルを模索している。このような機運の高まりを事業機会と捉え、日本発スタートアップが、ベトナムの温室効果ガス(GHG)排出削減を目指し、地場企業・機関と提携する動きが活発化している。

カーボンクレジット取引プラットフォームを運営する「カーボンイーエックス(Carbon EX)」(東京都港区)は2024年2月15日、ベトナム民間IT最大手のFPTと戦略的パートナーシップに関する覚書を締結した。カーボンイーエックスは、SBIホールディングスと、法人向けに二酸化炭素(CO2)排出量の算出を支援するアスエネが2023年に設立した合弁企業。FPTとの提携により、同社のプラットフォームを通じたカーボンクレジットの創出と販売、ベトナム市場でのカーボンクレジットの取引支援を進めていく。

農家向けに脱炭素ソリューションを提供するフェイガー(東京都港区)は2023年12月1日、FPTとベトナムのグリーン農業推進に関する覚書を締結した。FPTがベトナム国内のエコシステム形成を担い、フェイガーが2国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)(注1)も活用した財源確保や計画手法を提案する。ジェトロが開催した「イノ(Inno)・ベトナム・ジャパン・ファストトラック・ピッチ2023」(Inno、2023年11月15日記事参照)(注2)が協業のきっかけとなった。

このほか、グリーンカーボン(Green Carbon、東京都港区)は2023年6月、ベトナム国家農業大学と、水田由来のメタンガスを削減するための共同研究を開始。実証実験を経て、9月からはベトナム北中部ゲアン省で3万ヘクタールの水田圃場(ほじょう)でメタンガス削減プロジェクトを進めている。メタンガスの削減分はカーボンクレジット価格に換算し、クレジット取引につなげていく。

(注1)JCMは、相手国との企業間連携を通じ、日本の優れた低炭素技術の新興国などへの普及や地球規模でのGHG削減に貢献するもの。削減分は日本のGHG削減目標の達成に活用可能。

(注2)FPTはInnoで、「国境を越えたカーボンクレジット取引および管理プラットフォームの構築」をチャレンジ(事業課題)として提示し、国内外スタートアップからの解決策を募った。

(新居洋平)

(ベトナム)

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