プーリア州のグリーン水素バレー、EUが支援

(イタリア、EU、ドイツ、オーストリア、アフリカ)

ミラノ発

2024年03月07日

イタリアのエネルギー大手エジソンは2月26日、イタリア南部のプーリア州における「プーリア・グリーン水素バレー」プロジェクトが、EUの「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に選出されたと発表した(プレスリリース、イタリア語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同プロジェクトは水素インフラ整備に関するプロジェクト群「Hy2Infra」(2024年2月22日記事参照)の一部として、最大3億7,000万ユーロ相当の補助を受けられる。

「プーリア・グリーン水素バレー」は、エンジニアリングのサイペム、エネルギーのエジソン、再生可能エネルギー関連のインフラプロジェクトを行うソステネオなどにより運営される。エジソンの発表によると、欧州で初めてのグリーン水素大規模生産の取り組みの1つで、プーリア州の都市ブリンディジおよびターラントに、合計で160メガワット(MW)の水電解能力を持つ水素生産拠点を2カ所建設することが予定されている。同プラントが稼働すると、年間約2億5,000万立方メートルのグリーン水素が生産できる。

また、生産された水素の輸送は、ガス輸送・貯蔵のスナムが建設するパイプラインと連携する。このパイプライン建設計画もIPCEIの「Hy2Infra」の一部。ブリンディジ~ターラント間に85キロメートルの既存のガスパイプラインを利用し、全長約110キロメートルのパイプラインを設置して、プーリア州の水素事業者の拡大に寄与する。稼働は2028年を予定している。同プロジェクトには総額1億ユーロが投資される。

アフリカと欧州をつなぐ水素パイプラインも着手

またスナムは、アフリカと欧州をつなぐ水素パイプラインの建設計画も進めている。「SoutH2 Corridor外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は北アフリカからイタリア、オーストリア、ドイツを結ぶ水素パイプラン建設計画で、同じくEUの「共通利益プロジェクト(PCI)」と「相互利益プロジェクト(PMI)(2023年11月30日記事参照)に選出されている。スナムと、オーストリアのトランス・オーストリア・ガスライトゥング(TAG)、同ガス・コネクト・オーストリア(GCA)、ドイツのバイエルネッツの4社が中核となり運営する。全長は3,300キロメートル、北アフリカからの水素輸入能力が年間400万トンで、「リパワーEU」(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)が目標としている輸入量の40%を補う。既存の天然ガスパイプランを70%以上の割合で再利用し、2030年までに稼働を予定している。

2023年11月に、ジョルジャ・メローニ首相とドイツのオラフ・ショルツ首相が会談を行った際も、水素パイプラン建設計画について再確認された。経済、イノベーション・社会的結束、気候・エネルギー・環境、外交・防衛などの5つのテーマにおける協力体制について定められた2国間の行動計画にも盛り込まれ、調印後の記者会見においても、ショルツ首相はパイプラインの重要性について強調した。

(平川容子)

(イタリア、EU、ドイツ、オーストリア、アフリカ)

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